診療支援
治療

3 偽性腸閉塞
intestinal pseudo-obstruction
中島 淳
(横浜市立大学大学院主任教授・肝胆膵消化器病学教室)

疾患を疑うポイント

●器質的原因疾患のない繰り返す消化管閉塞症.

●消化管閉塞による外科的腸管切除を行っても閉塞の原因がみつからない.

●原因不明の消化管拡張画像(図4-51)

学びのポイント

●希少難病であるが疾患の認知度が低く診断確定までに長期間を要する.疾患の認知が重要.

●多くは繰り返す消化管閉塞のため器質性疾患によるものと考え外科的に開腹手術が行われ,原因不詳のまま短腸症候群になることもある.

●外科的治療は有効ではなく治療の基本は栄養療法と消化管減圧.

▼定義

 腸管内容物の輸送障害により,機械的な腸管閉塞機転がないにもかかわらず腹部膨満,腹痛,嘔吐などの腸閉塞症状を引き起こす,消化管運動異常疾患では最も難治性かつ重症な希少難病である.

▼病態

 原因不明の腸管蠕動低下による腸閉塞症状に加えて,時に腸内細菌異常増殖(bacterial overgrowth)症候群による下痢も認められる.さらに高度腸管拡張による粘膜変性,あるいは腸閉塞による頻回の消化管切除術による短腸症候群で消化吸収障害が起こる.病理学的に,腸管平滑筋障害型,神経障害型,Cajal(カハール)介在細胞障害型に分類される.

▼疫学

 厚労省研究班の調査ではわが国の慢性偽性腸閉塞症患者数は約1,300人とまれな疾患で,新生児より高齢者まで全年齢で発症するが平均年齢57.8歳,男女比1:1.44でやや女性に多い傾向であった.約6割が原発性で,続発性では全身性硬化症によるものが多い.

▼分類

 大腸のみ罹患する急性型と小腸を主とした全消化管が罹患する慢性型に分類される.

急性大腸偽性腸閉塞症〔Ogilvie(オギルヴィー)症候群〕

 機械的閉塞機転がなく大腸が急速に拡張する疾患で,種々の全身疾患,特に術後に続発する.高度の拡張を生じるため適切に減圧されないと穿孔を生じ致命的となる.

慢性偽性腸閉塞症

 慢性偽性腸閉塞症(chroni

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