診療支援
治療

3 腸管ベーチェット病
intestinal Behçet disease
久松 理一
(杏林大学教授・消化器内科学)

疾患を疑うポイント

●Behçet病の全身症状(発熱,口腔内アフタ,外陰部潰瘍,皮膚症状)を認め,右下腹部痛を認める.

●下部消化管内視鏡で回盲部に定型的な類円形の深掘れ潰瘍を認める.

学びのポイント

●Behçet病は①再発性口腔内アフタ,②皮膚症状,③眼症状,④外陰部潰瘍を四徴とする難治性全身性炎症性疾患.

●Behçet病は全身性炎症性疾患で多彩な臓器が標的となる.そのなかで腸管Behçet病は穿孔や大出血をきたす場合があり術後再発率も高い.

●抗TNF-α抗体製剤が高い有効性を示し内視鏡的治癒も期待できる.

▼定義

 1937年にトルコ人皮膚科医のBehçetによって報告された,①再発性口腔内アフタ,②皮膚症状,③眼症状,④外陰部潰瘍を四徴とする難治性全身性炎症性疾患.厚生労働省ベーチェット病に関する調査研究班の定めた診断基準において腸管Behçet(ベーチェット)病は神経型,血管型とともに特殊型に分類される.

▼病態

 本疾患の原因は不明であるが,ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)との相関やシルクロードに沿って好発地域がみられること,IL-23受容体遺伝子の一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)が疾患感受性と関係していること,炎症性サイトカインの産生亢進が認められることなど,遺伝的要素や自然免疫との関係が示唆されている.

▼疫学

 日本では指定難病となっており特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は15,284人(平成29年度)である.Behçet病の3~16%に消化管病変が合併するとされており,消化管病変は出血や穿孔をきたすため一般に予後不良因子と考えられている.

▼診断

 Behçet病の診断基準は厚生労働省ベーチェット病に関する調査研究班による診断基準(表4-14)が用いられ腸管Behçet病は神経型,

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