診療支援
治療

5 虫垂炎
appendicitis
斉藤 裕輔
(市立旭川病院・消化器病センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●10~20歳代の若年者に好発する.

●腹痛は悪心・嘔吐を伴う心窩部痛から発症,右下腹部に移動・限局する.

学びのポイント

●急性腹症のなかで最も頻度の高い疾患であり,保存的治療か手術治療を行うかの診断が重要.

●腹部所見としてMcBurney・Lanz圧痛点の確認と腹膜炎の徴候である筋性防御やBlumberg徴候の有無に注意.血液検査や画像診断も参考に鑑別診断を行う.

▼定義

 虫垂の急性炎症性疾患.急性腹症のなかでは最も頻度の高い疾患であり,腹膜炎を伴う急性虫垂炎は緊急手術の適応である.

▼病態

 病因として細菌やウイルス感染,異物,アレルギー,循環障害(虚血)などにより急性虫垂炎が生じるとされている.虫垂内腔の閉塞と,それに伴う血流障害と二次的細菌感染が重要視されている.

▼疫学

 若年者から高齢者まで幅広く発症するが,10~20歳代に好発し,男女間で差はない.

▼分類

 以下の分類が一般的である.

カタル性虫垂炎(catarrhal appendicitis)

 炎症が粘膜下層までに限局し,虫垂は腫大して粘膜は腫脹する.

蜂窩織炎性虫垂炎(phlegmonous appendicitis)

 炎症が筋層から全層に及ぶもの.虫垂壁は肥厚し,内腔に膿性の浸出液が貯留する.

壊疽性虫垂炎(gangrenous appendicitis)

 虫垂壁の壊死・穿孔を起こし膿瘍や腹膜炎を呈する.

▼診断

 典型例では診断は容易であるが,肥満者や高齢者,小児,妊婦などでは診断が困難な場合がある.また手術適応か否かの判断に苦慮することも多く,血液検査所見やほかの画像診断を参考にしながら決定する.

自覚症状

 前駆症状として腹痛,悪心・嘔吐,発熱などがある.腹痛は通常,心窩部痛から発症する鈍い周期性疼痛(内臓痛)で数時間後には臍部から右下腹部に移動し限局してくる鋭い持続性疼痛(体性痛)となる.発熱は37

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