診療支援
治療

1 十二指腸乳頭部腫瘍
duodenal papilla tumor
川嶋 啓揮
(名古屋大学医学部附属病院・光学医療診療部部長)

疾患を疑うポイント

●十二指腸乳頭部癌は50~70歳代の男性に多いとされている.

●腺腫など良性腫瘍,早期の癌では無症状で検診目的などの上部消化管内視鏡検査で偶然発見されることが多い.

●進行癌では胆管や膵管の拡張,それに伴う黄疸,膵炎発作などで発見される.

学びのポイント

●十二指腸乳頭部にできる腫瘍の総称で,胆管と膵管が開口しているという解剖学的特性から診断方法・治療方法がほかの消化管腫瘍と異なる点が多くある.

●発癌過程では良性の腺腫から癌になるとされ十二指腸乳頭部腺腫は前癌病変と考えられている.

●十二指腸乳頭部癌の標準治療法は膵頭十二指腸切除術を基本とした外科的治療.

●十二指腸乳頭部癌の外科的切除後の5年生存率は早期のものであれば90%以上と良好であるが転移を伴う症例では0%と不良.

▼定義

 十二指腸乳頭部腫瘍は十二指腸乳頭部にできる腫瘍の総称であり,頻度の高い腺腫や腺癌,また頻度は低いが神経内分泌系腫瘍(neuroendocrine tumor)なども含む.

▼病態

 大十二指腸乳頭は十二指腸下行部の中央あたりに存在し,肝臓で産生される胆汁を排出する胆管と膵臓で産生される膵液の膵管の流出路である.十二指腸内腔に突出する膨大部とその中を貫通する乳頭部胆管,乳頭部膵管,共通管やOddi(オッディ)括約筋などで構成される解剖学的特殊性をもつ.腺腫や比較的早期の癌では無症状であり検診目的の内視鏡検査にて偶然発見されることが多い.進行すると胆汁や膵液の流出障害を起こし,腹部超音波検査などの画像診断で胆管・膵管の拡張が認められ閉塞性黄疸を起こす.良性の腺腫から腺腫内癌,進行癌へと進行する症例が多いと考えられている.ほかの消化管癌とは異なりはっきりとした早期乳頭部癌の定義はなされていない.乳頭部癌はその肉眼形態により腫瘤型(非露出腫瘤型,露出腫瘤型),潰瘍型,混在型などに分類される.

▼診断

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