診療支援
治療

2 小腸癌
small intestinal cancer
中村 正直
(名古屋大学医学部附属病院・消化器内科講師)

▼定義

 原発性小腸癌と転移性小腸癌に分かれ,原発性は高分化,低分化,未分化型腺癌ほかが認められる.また,原発性のなかに家族性大腸腺腫症の小腸病変(小腸癌)も含まれる.病理学的に癌を証明することにより確定診断となる.

▼病態

 小腸上皮性腫瘍である.発生部位は56.7%が空腸側に存在し,それらはTreitz(トライツ)靱帯から60cm以内に83.9%がみられた報告がある.小腸腺腫内癌を認めることからadenoma-carcinoma sequence(腺腫・癌相関)が考えられる.

▼疫学

 小腸癌の発生頻度は全消化管癌の1%未満の報告があるが,腫瘍発生自体が比較的まれであるため,その頻度はさまざまである.

▼分類

 病期分類にはTNM分類を用いる.stage Iは粘膜下層までにとどまり,リンパ節転移や遠隔転移を伴わないものである.肉眼型は,早期癌としては隆起型の発見頻度が高い.進行癌は隆起型と潰瘍型に分かれ,潰瘍型が多い.

▼診断

症状と診断

‍ 無症状のうち,早期に診断されるケースは少ない.腹痛,腹部膨満感,下痢,腸閉塞,消化管出血などの症状で発症し診断されることが多い.血液検査データでは低色素性貧血を認める.腫瘍マーカーCEA,CA19-9の上昇を認めることがあるが,その頻度は低い.

画像診断

 診断方法は,画像診断が中心となる.小腸X線二重造影,カプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡,腹部造影CT検査などを用いる.

1)小腸X線二重造影

 腫瘍自体は透亮像もしくは不整なバリウムのたまりとして指摘され,管腔の狭窄を伴う病変ではナプキンリング像(napkin-ring sign)といわれる短く強い輪郭が明瞭な輪状狭窄の所見を認める.進行癌の境界部においては腫瘍が正常粘膜側にはみ出すように浸潤し正常組織を圧排しoverhanging edgeとして不整な境界線を認める.

2)カプセル内視鏡

 腸管の蠕動

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