診療支援
治療

3 小腸・大腸良性腫瘍
benign tumor of small and large intestine
中村 正直
(名古屋大学医学部附属病院・消化器内科講師)

▼定義

 小腸または大腸の壁内より発生する新生物で,病理学的に悪性所見を伴わないもの.発生部位により上皮性と非上皮性に分かれる.良性であるためその治療方針は個々に検討する必要がある.

▼病態

 粘膜から漿膜の構造の一部が腫瘍化し通常の正常構造のサイズを逸する状態が多い.

▼疫学

 小腸良性腫瘍の頻度は不明である.大腸良性腫瘍のうち大腸腺腫が約80%を占めるため,ほかの良性腫瘍の頻度は低い.

▼分類

 小腸・大腸良性腫瘍は組織学的に上皮性と非上皮性に分かれ,小腸と大腸でその特徴が異なる.

‍ 小腸良性腫瘍では非上皮性腫瘍の頻度が高い.上皮性では過誤腫性のポリポーシスを認めるが,単発の上皮性腫瘍は炎症性ポリープ,Peutz-Jeghers(ポイツ-ジェガース)型ポリープがあり,過形成性ポリープはほとんど認めない.非上皮性腫瘍は粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)とよばれ,粘膜下層から漿膜の間で発生する腫瘍である(表4-27)

 大腸上皮性良性腫瘍で頻度が高いのは管状腺腫,過形成性ポリープである.ほかには過誤腫,炎症性ポリープがあるがそれらの頻度は低い.過誤腫は若年性ポリープ,Peutz-Jeghers型ポリープがある.通常臨床で認めるSMTは脂肪腫の頻度が高い.他に平滑筋腫,血管腫などが挙げられる(表4-27)

 内視鏡技術の進歩により小腸,大腸におけるgastrointestinal stromal tumor(GIST)が最近よく診断されるようになった.その発生頻度は,10万人に1~2人と少ない.消化管壁の筋層間にある神経叢に局在する消化管のペースメーカといわれるCajal(カハール)の介在細胞に分化する細胞から発生する.日本では,発生部位として胃の割合が70%と高く,ついで小腸20%,大腸および食道が5%である.リスク分類により治療方針を決定する.

▼診断

 症状として

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