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治療

(1)IgA血管炎
矢野 智則
(自治医科大学准教授・消化器内科学)

▼定義

 免疫複合体性血管炎の1つであり,四肢,特に下肢に出現する紫斑のほか,腹痛,関節痛,腎症を主徴とする細小動脈~毛細血管炎である.かつては,Henoch-Schönlein(ヘノッホ-シェーンライン)紫斑病アレルギー性紫斑病とよばれていた〔第13章のも参照〕.

▼病態

 先行感染として,β溶連菌やマイコプラズマ,ウイルスなどの感染や薬剤アレルギーが誘因となることもある.凝固能異常や血小板減少を伴わない紫斑と関節痛,腹痛,腎症が特徴的な症状で,これらの出現頻度は,紫斑が100%,関節痛が40~75%,腹痛が50%,腎症が20~50%にみられ,消化管出血も20~30%にみられる.各症状の時期や順番は一定ではなく,初診時には腹痛のみで,紫斑や関節痛が遅れて出現する場合もある.

▼疫学

‍ 小児に多く,90%が小児に発生するが,高齢者を含む成人にもみられる.16歳以下の小児10万人に対して,10~20人の発生頻度といわれ,特に4~6歳の発生頻度が多い.

▼診断

 紫斑からの皮膚生検や消化管病変からの生検での,IgA免疫複合体の沈着を伴う白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)が特徴的所見である.

 腎症を伴えば尿検査で血尿がみられるが,さらに蛋白尿も伴う場合には1日尿蛋白をモニターする.

▼治療

 多くは対症療法のみで自然軽快する.関節痛が強い場合には,アセトアミノフェンやNSAIDsを使用し,腹痛が強い場合には副腎皮質ステロイド治療を行う.

 ネフローゼ症候群を伴う腎症では,ステロイドに加え,レニン-アンジオテンシン系阻害薬,抗血小板薬を使用する.重症例では腎生検を行って,ステロイドパルス療法,ステロイド・ウロキナーゼパルス療法,血漿交換療法,シクロスポリン療法なども検討される.

▼予後

 小児では予後がよく,腎症のない例では1か月以内に治癒する.成人で

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