診療支援
治療

1 直腸粘膜脱症候群,直腸脱(cap polyposisを含む)
mucosal prolapse syndrome of the rectum,rectal prolapse
渡辺 憲治
(兵庫医科大学特任准教授・腸管病態解析学)
大川 清孝
(十三市民病院・顧問)

疾患を疑うポイント

●MPSは,血便や残便感が主訴の患者に,長い排便時間や排便時にいきむ習慣を確認して疑う.

●直腸脱は,直腸の脱出が主訴の患者や漏便,排便困難を有する患者に怒責時の直腸脱出の有無を確認して疑う.

学びのポイント

●cap polyposis(図4-72a)は頂部白苔を有する多発隆起性病変が疾患名の由来で,隆起型MPS(図4-72b)と鑑別を要する疾患である.H. pylori感染症における胃外病変として除菌療法が奏効する場合がある.

▼定義

‍ 直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome of the rectum:MPS)は便の排出障害による直腸粘膜の虚血性病変で,直腸脱は高齢などによる直腸の脱出である.

▼病態

 MPSは排便障害のうち,便の直腸からの排出障害に関連する.排便時に弛緩すべき恥骨直腸筋が長時間の排便やいきみにより長時間収縮することで直腸前壁粘膜が下方に脱出し,慢性的機械刺激や肛門括約筋の絞扼により虚血性変化を起こす.

 直腸脱は,深いDouglas(ダグラス)窩や直腸の仙骨前面への固定不良などの先天的要因に,老化や出産などによる骨盤底筋群の脆弱化や肛門括約筋の弛緩,過度の腹圧上昇や排便時の怒責など後天的要因が加わって発症するとされている.

▼疫学

 MPSは若年者から高齢者まで起こりえるが,若い男性に多い傾向がある.直腸脱は高齢の女性に多く,cap polyposisも女性に多い.

▼分類

 MPSは病変の形態により潰瘍型,隆起型,平坦型に分類される.直腸脱は脱出の程度により完全直腸脱と不完全直腸脱に分類される.

▼診断

 MPSは直腸前壁側に好発し,直腸癌の除外診断が重要である.内視鏡所見は多彩だが病変の介在粘膜は炎症所見が乏しく,内視鏡生検による粘膜固有層の線維筋組織増生による線維筋症(fibromuscular obliterati

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