診療支援
治療

1 上皮性腫瘍
epithelial tumor
髙山 哲治
(徳島大学大学院教授・消化器内科学)

疾患を疑うポイント

●持続する肛門痛や出血.

学びのポイント

●わが国における肛門癌の約80%は腺癌.

●肛門管(3~4cm)の歯状線より口側は主に移行上皮,肛門側は重層扁平上皮.前者より腺癌,後者より扁平上皮癌や類基底細胞癌が発生する.

●HPV,HIVの感染を検索する必要性あり.

●切除可能病変であれば外科的切除が原則であり,切除不能であれば化学療法の適応.

●切除可能病変の治療のオプションとして化学放射線療法がある.

▼定義

 恥骨直腸筋上縁から肛門縁までの3~4cmの肛門管に発生する癌である(図4-76).従来,肛門管は大腸の一部に含まれていたが,大腸癌取扱い規約第8版以降では大腸の一部ではなくなり,肛門管癌は独立して扱うことになった.

▼病態

 肛門管は,発生学的に多種・多彩な組織型および形態を取りうることが特徴である(表4-36).肛門癌の一部,特に扁平上皮癌の発生には,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)が関与する.HPVは性感染症を引き起こすウイルスの一種であり,肛門部に感染すると尖圭コンジローマをきたすことがある.尖圭コンジローマは扁平上皮癌に進展することがある.このため,一部の肛門癌の発生には肛門性交が関与しており,男女ともにAIDS患者でリスクが高いとされる.

▼疫学

 従来より大腸癌の約1~2%とされており,希少癌の1つである.50歳以上に多い.HPV感染者,AIDS患者,肛門性交が危険因子である.

▼分類

 肛門管は解剖学的に恥骨直腸筋上縁から歯状線までの内胚葉由来の移行上皮および立方円柱上皮(痛覚はない),および歯状線から肛門縁までの外胚葉由来の重層扁平上皮(痛覚あり)より発生する.前者には腺癌や粘液癌の直腸型(直腸癌と類似),肛門腺由来の腺癌や粘液癌,痔瘻に合併する癌(痔瘻癌)などが発生する.後者には扁平上皮癌や類基底細胞癌などが発

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