診療支援
治療

消化管内視鏡診断・治療
炭山 和毅
(東京慈恵会医科大学教授・内視鏡医学)

学びのポイント

●適応を理解する.

●目的にあわせ,適切な手技や機器を選定する.

●外科手術などほかの治療法との違い,利点,欠点を考慮し治療適応を検討する.

▼消化管内視鏡の適応

 消化管内視鏡の適応は,出血性病変から,炎症性疾患,腫瘍性病変の診断治療,胃瘻造設など幅広い.また,健常者に対する検診としても実施されている.しかし,内視鏡挿入には侵襲を伴うことから,偶発症の可能性を完全に取り除くことはできない.内視鏡を実施するメリットがデメリットを上回ると判断され,被検者の十分な理解と同意が得られた場合にのみ消化管内視鏡の適応となる.適応を判断するには,臨床経過,バイタルサイン,既往歴,服薬歴,アレルギーの有無などの臨床情報を事前に把握しておくことが必須である.特に,以下のような状況が疑われる症例では適応の検討は慎重にすべきである.

●ショック状態

●腸閉塞

●消化管穿孔

▼通常内視鏡診断

 白色光を用いた通常内視鏡診断では,粘膜表面の色調や凹凸の変化に着目する.潰瘍やポリープ,癌などの上皮性疾患の多くは,色調や粘膜模様が,周囲の非病変部とは異なるパターンを呈する.一方,粘膜下腫瘍や静脈瘤など非上皮性の病変は,隆起性病変であっても,表面の色調や粘膜模様の変化が乏しく,隆起辺縁の立ち上がりはなだらかで,襞が存在する部位では,襞が架橋されるように伸展された架橋襞(bridging fold)所見が認められる.

▼画像強調観察を用いた精査

 白色光観察でなんらかの異常を認めた場合,画像強調観察法や拡大内視鏡による精査が行われる.腫瘍部では,非腫瘍部と比べ腺管開口部(pit)や血管網の構造や配列に不整を呈し,不整の程度は癌の進行とともに強まる傾向にある.そのため,表層の微細構造の描出性に優れた画像強調技術を併用した拡大内視鏡診断は,腫瘍非腫瘍の鑑別や癌の水平垂直方向の進展範囲診断にきわめて有用である.

 最も汎

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