疾患を疑うポイント
●慢性に経過する胆道系酵素上昇をきたす.
●皮膚瘙痒感が初発症状となることがある.
学びのポイント
●ALPやγ-GTPなど胆道系酵素上昇を認め,かつ画像上胆管拡張がない場合,年齢や性別にかかわらずまず初めに念頭におくべき疾患である.
●的確な診断・治療がなされない場合徐々に進行して肝硬変,さらに肝不全へと至る.
▼定義
慢性に進行する胆汁うっ滞性肝疾患である.胆管上皮細胞の変性・壊死によって肝内小型胆管が破壊され消失することにより,慢性進行性の胆汁うっ滞を呈する.
▼病態
障害胆管近傍にリンパ球を主体とした著明な炎症細胞浸潤がみられること,自己抗体である抗ミトコンドリア抗体(anti-mitochondrial antibody:AMA)が90%以上の症例で検出されること,ほかの自己免疫疾患を高率に合併することから,臓器特異的な自己免疫疾患の1つと考えられている.
自己免疫反応により胆管上皮細胞が障害されると小型胆管における胆汁の流れが滞り,胆汁うっ滞が生じる.胆汁には細胞障害性の高い疎水性胆汁酸が含まれているため,胆管上皮細胞がさらに障害され,加えて周囲の肝細胞にも障害が波及する.肝細胞障害が進行すると,肝線維化が進行して組織学的に肝硬変となり,肝細胞機能不全および門脈圧亢進症によってさまざまな合併症を起こして,最終的には肝不全へと至る.
▼疫学
国内患者総数は約37,000人と推定されている.診断時年齢のピークは50~60歳代だが,まれに小児例もみられる.男女比は約1:4であり,近年男性患者が増加している.
▼分類
組織学的分類としてScheuer(ショイエル)分類がしばしば用いられている(表5-11図).2011年新たにNakanuma分類が提唱された.
▼診断
➊症状
病初期は無症状のことが多いが,皮膚瘙痒感や疲労感を自覚している症例が少なからず存在する.身体所見と