診療支援
治療

8 薬物性肝障害
drug induced liver injury(DILI)
上野 義之
(山形大学教授・消化器内科学)

疾患を疑うポイント

●医療用薬剤以外の健康食品などでも発症しうる.

●起因薬剤投与後数日から数か月後まで幅広い発症時期がある.

学びのポイント

●DILIはまず薬剤や健康食品を含む民間医薬品の使用・曝露を確認せねば疾患想起につながらない.したがって丁寧かつ詳細な病歴確認が重要.

●診断は上記の病歴の確認以外に,ほかの肝疾患の除外も必要であり判断が難しい場合も多い.しかし,適切に診断され重症化する前に被疑薬を中止できた場合の多くの予後は良好である.

●DILIには,その薬剤が本質的に肝障害を起こす機序が明らかなもの(intrinsic liver injury)があり,これは用量依存性の肝障害を起こす.一方,患者自身の個体要因に基づく(アレルギーなど)肝障害(idiosyncratic liver injury)では,発症予測は困難であり診断も難しい場合が多い.

▼定義

 わが国で広く用いられているJDDW(日本消化器関連学会機構)の診断基準(2004年)ではALT値が正常の2倍,もしくはALP値が正常上限を超えたものを肝障害と定義し,さらに初診時のALT値とALP値を用いてそれぞれの正常値との比を算出して肝細胞障害型,胆汁うっ滞型,混合型に病型を分類している〔日本肝臓学会雑誌 肝臓 46巻 2号(2005年),85-90頁,DDW-J 2004 ワークショップ薬物性肝障害診断基準の提案,88頁 表2 薬物性肝障害診断基準の使用マニュアル 中の3)を参照〕.

▼病態

 薬剤性肝障害の病態形成については,純粋に肝細胞障害を用量依存的に引き起こすものから,患者個人の代謝にかかる遺伝的因子に関連するもの,そしてその中間代謝産物が修飾されて免疫反応に関与して炎症を惹起するものなど,多様な機序が想定されている.最も単純なものは用量依存的に肝細胞障害を惹起するもので,これはintrinsic DILIとされ

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