診療支援
治療

(1)肝細胞癌
hepatocellular carcinoma(HCC)
阪森 亮太郎
(大阪大学大学院学内講師・消化器内科学)
竹原 徹郎
(大阪大学大学院教授・消化器内科学)

▼概念

 肝細胞癌は主としてB型肝炎ウイルス(HBV)あるいはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染や非アルコール性脂肪肝炎,アルコール性肝障害などによる慢性肝炎および肝硬変に伴う持続性壊死・炎症および線維化を背景に発癌をきたす肝細胞由来の悪性腫瘍である.わが国では肝細胞癌患者の約70%はB型あるいはC型慢性肝疾患患者であり,また肝細胞癌患者の多くに肝硬変が併存している.このことから高危険群の囲い込みが可能となり,早期発見につながることが肝細胞癌の特徴の1つである.全世界においては,HBVの持続感染者は約3億5,000万人,HCVの持続感染者は約1億7,000万人と推定されており,国際的にも肝細胞癌に対する関心は高まっている.近年の画像モダリティの進歩に伴い,より小型の段階で発見される傾向であり,治療法の進歩もあり,わが国では予後は改善してきている.

▼病因・発癌機序

 わが国における肝細胞癌の多くは,HBV(15%程度),HCV(60%程度)の長期感染による慢性肝炎,肝硬変を背景としており,その他25%程度の非B非C肝癌の背景肝疾患には非アルコール性脂肪肝炎,アルコール性肝硬変,自己免疫性肝疾患などが含まれる.特に,肥満や糖尿病合併患者からの肝発癌が注目されている.

 発癌機序は病因により相違があるとされている.HBVによる肝癌はウイルス蛋白そのものによる肝発癌作用やHBV遺伝子変異,HBVゲノムの組み込みが肝発癌メカニズムに関与していると考えられている.またC型肝炎と同様に,炎症の持続による酸化ストレス亢進や持続炎症そのものも重要な発癌要因である.HCVによる肝癌は,ウイルスのコア蛋白により活性酸素の産生を亢進させ,活性酸素による遺伝子変異が発癌を誘導する機序や,細胞内シグナル伝達制御による機序が報告されている.いずれのウイルスにおいても持続する肝細胞死,炎症と線維化が発癌に関連する

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