診療支援
治療

1 肝血管腫
hepatic hemangioma
阪森 亮太郎
(大阪大学大学院学内講師・消化器内科学)
竹原 徹郎
(大阪大学大学院教授・消化器内科学)

▼概念・臨床所見

 肝血管腫は,1層の血管内皮細胞で覆われた多数の血管腔,および血液で満たされた海綿状空隙と,これを被覆する菲薄な線維性間質からなる良性非上皮性腫瘍である.良性肝腫瘍のなかで最も頻度が高く,欧米では剖検例の約5%にみられ,若年者より中高年に多くみられる.ほとんどが無症状で画像検査により偶然発見されることが多い.大きさは数mmから数cmまでさまざまであるが,巨大例では,まれに周辺臓器の圧排や血管腫の破裂,血管腫内出血により,上腹部や右季肋部の不快感や疼痛などの症状をきたしたり,肝の腫大または肝の一部が腫瘤として触知されたりすることがある.また腫瘍内に血栓を形成することにより,血小板,凝固因子が消費され,いわゆる播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)をきたすことがあり,Kasabach-Merritt(カサバッハ-メリット)症候群(thrombocytopenia-hemangioma syndrome)とよばれる.

▼検査所見

 腹部超音波検査では,全体が高エコー,辺縁が高エコー(marginal strong echo)の腫瘤性病変として描出されることが多く,また体位変換や圧迫,時間によって腫瘤のエコーレベルに変化を認めるカメレオンサイン(chameleon sign)が肝血管腫に特徴的な所見である.dynamic CTでは,造影早期に腫瘍辺縁部から造影され,次第に中心部に向かって造影剤による濃染部が拡大していく遅延性のプーリング像が観察される.この濃染は数分以上の長時間にわたる.中心部に線維化や硝子様硬化,石灰化を伴う場合は,造影されない欠損像となる.MRIでは,境界明瞭でT2強調画像で著明な高信号,T1強調画像で低信号を示す.ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)による造影MR

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