▼概念・臨床所見
肝血管腫は,1層の血管内皮細胞で覆われた多数の血管腔,および血液で満たされた海綿状空隙と,これを被覆する菲薄な線維性間質からなる良性非上皮性腫瘍である.良性肝腫瘍のなかで最も頻度が高く,欧米では剖検例の約5%にみられ,若年者より中高年に多くみられる.ほとんどが無症状で画像検査により偶然発見されることが多い.大きさは数mmから数cmまでさまざまであるが,巨大例では,まれに周辺臓器の圧排や血管腫の破裂,血管腫内出血により,上腹部や右季肋部の不快感や疼痛などの症状をきたしたり,肝の腫大または肝の一部が腫瘤として触知されたりすることがある.また腫瘍内に血栓を形成することにより,血小板,凝固因子が消費され,いわゆる播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)をきたすことがあり,Kasabach-Merritt(カサバ