学びのポイント
●本症は単一の疾患ではない.
▼定義
鉄が過剰に蓄積して臓器障害をきたした状態をヘモクロマトーシス(HC)と称す〔第6章の→も参照〕.
▼分類
遺伝性HCと血液疾患や輸血に伴う二次性HCがあり,遺伝性は変異の遺伝子により1型(HFE),2A型(HJV),2B型(HAMP),3型(TfR2),4型(SLC40A1)に分類される.それぞれの遺伝子産物はHFE(1型),ヘモジュベリン(2A型),ヘプシジン(2B型),トランスフェリンレセプター2(TfR2,3型)とフェロポーチン(FPN,4A,4B型)である.その他にセルロプラスミン,フェリチンH鎖,トランスフェリンの遺伝子変異に伴う鉄過剰症も存在する.HFE,ヘモジュベリンとTfR2はヘプシジンの肝細胞での合成を調節する.
▼病態
鉄は生体に必須の元素であるが,過剰に存在すると活性酸素を生じて細胞を障害する.鉄代謝に重要な蛋白は肝細胞の産生するヘプシジンと腸管上皮細胞やマクロファージに存在する鉄輸送膜蛋白であるFPNである.腸管上皮細胞において鉄は頂端膜のdivalent metal transporter(DMT)により細胞質に取り込まれた後に基底側膜のFPNにより体内へ吸収される.ヘプシジンがFPNに結合するとその複合体はエンドサイトーシスされライソゾームで分解される.つまりヘプシジンは腸管上皮細胞の基底側膜やマクロファージの形質膜でのFPNの発現を減少させることにより鉄の吸収とマクロファージからの鉄の放出を抑制する.遺伝性HC(1~3型)ではヘプシジンの発現調節に関与する蛋白の異常によりヘプシジンの発現が減少し,腸管上皮細胞の基底側膜でのFPNの発現の増加により鉄の吸収が亢進し鉄過剰となる.4型にはFPNの機能低下によりマクロファージに鉄が貯まる4A型と機能亢進により鉄の吸収が亢進する4B型が存在する.4A型はFP
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