疾患を疑うポイント
●どのウイルスも急性肝炎を起こしうる.
●急性肝炎の症状は黄疸(褐色尿)のほかは全身倦怠感,食欲低下など非特異的なものが多い.
学びのポイント
●ウイルス性急性肝炎は急性肝障害のなかで最も頻度の高いものの1つ.正確に診断し,適切に治療することは大切.
●ウイルスに感染した肝細胞が主に免疫応答により破壊され,肝機能障害を生じる.
●A型肝炎,E型肝炎は経口感染による肝炎であり,原則として慢性化しない.
●B型肝炎,C型肝炎は経皮・粘膜感染により生じ慢性化することがある.
●EBウイルス,サイトメガロウイルスの初感染の際には異型リンパ球の末梢血への出現を特徴とする急性肝障害が起こる場合がある.
●ウイルス性急性肝炎に対する抗ウイルス療法は,重症肝炎を除くと標準療法ではない.
▼定義
ウイルス性急性肝炎は,ウイルスに感染した肝細胞が免疫応答あるいはウイルスの細胞障害作用により破壊され,炎症と同時に肝機能障害を生じる疾患である.
ウイルス性慢性肝炎は急性肝炎罹患後にウイルスの増殖を抑え込むことができず,ウイルスの増殖に伴う炎症,肝細胞障害が持続する.
▼病態
肝炎ウイルスにはA,B,C,D,Eの5種類がある.主に肝細胞に感染が起こり,感染した肝細胞がウイルスの直接作用もしくは免疫応答により破壊されることで肝炎を発症する.
ウイルスの感染経路は①食品などとともに口から入ったウイルスが消化管から腸間膜静脈→門脈→肝臓に至る経路(経口感染),②経皮的・経粘膜的に侵入したウイルスが血液を介して肝臓に至る経路(非経口感染)の2つがある.A型肝炎,E型肝炎は主に①により,B型肝炎,C型肝炎,D型肝炎は主に②により感染する.
肝炎ウイルスの初感染の際には急性肝炎を発症する.感染が多くの肝細胞に広がり,破壊される際に症状が生じるため肝炎ウイルスの潜伏期は一般に長く1か月前後のことが多い〔本章「急性肝
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