診療支援
治療

(1)カロリ病
Caroli disease
原 精一
(東邦大学医療センター大森病院・消化器内科)
五十嵐 良典
(東邦大学医療センター大森病院・消化器内科教授)

疾患を疑うポイント

●原因不明の難治性胆管炎や門脈圧亢進症.

●限局性の肝内胆管拡張.

●若年性胆石症や若年性胆管細胞癌.

学びのポイント

●先天性胆道拡張症と区別する.

●拡張胆管は肝内に限局している.

●多発性囊胞腎を併発することが多い.

▼定義

‍ 肝内(末梢)胆管限局性囊状拡張が多数認められる先天性胆管形態異常で,先天性の肝外胆管拡張は伴わないものと定義される.本邦では,約90%に先天性肝線維症が合併するが,肝線維症を伴わず肝内胆管の多発性囊状拡張のみの型(pure type)も存在する.

▼病因

 原始胆管板(ductal plate)の形成異常が関与すると考えられている.最近では,一次絨毛を構成する分子異常(絨毛病)との関連も示唆され,特に肝と腎に多発性の囊胞疾患を伴う肝腎囊胞線維症(hepatorenal fibrocystic disease)は,絨毛病の一部として理解される.常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)では,しばしばCaroli病や肝線維症が認められる.

▼臨床症状

 無症状例も多い.症状出現時期は幼児期から60歳代までと幅広い.肝腫大が認められる.主症状は症例により異なる.肝内結石を合併すると,発熱,腹痛,黄疸など胆管炎症状が認められる.肝線維症合併した例では進行すると,門脈圧亢進に伴う症状(肝不全,腹水,食道静脈瘤)が出現する.また,肝肺症候群を合併することがある.

▼診断

生化学検査

 胆管炎を併発すれば,肝機能異常が認められる.

腹部超音波,腹部CT,MRCP

 肝内胆管の囊胞状拡張を認める.拡張胆管内に,胆泥や胆砂,結石を認めることがある(図5-30a,b).肝内結石症の診断や肝線維症合併例では門脈圧亢進に伴う側副血行路や脾腫の診断にも有用である.

▼治療・予後

 胆管炎には,

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