疾患を疑うポイント
●アルコール多飲歴がある患者,特に男性患者で,反復する上腹部痛発作,食後,特に脂肪の多い食事や飲酒後に左季肋部痛や背部痛を生じる.
●典型例では腹痛や背部痛,時に急性増悪(急性膵炎)を繰り返しながら進行し,膵機能の低下による消化吸収障害(膵外分泌機能不全)や膵性糖尿病(膵内分泌機能不全)をきたすようになる.
学びのポイント
●患者数の多い重要な膵疾患であり,病期によって臨床所見や治療法が大きく変化する.
●生活習慣病的側面もあり,生活指導から薬物療法,内視鏡的治療,外科治療と広範,適切な治療アプローチが必要となる.
●膵癌の危険因子である.
▼定義
慢性膵炎とは膵臓の内部に不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの慢性変化が生じ,進行すると膵外分泌・内分泌機能の低下による消化吸収障害や膵性糖尿病を伴う病態である.多くは非可逆性である.経過中に主膵管や分枝膵管に炭酸カルシウムを主成分とする結石を生じたものが慢性石灰化膵炎(膵石症)である.
▼病態
➊病理
特徴的な膵組織所見として,膵実質の脱落と線維化が観察される.膵線維化は主に小葉間または小葉間・小葉内に観察され,小葉が結節状,いわゆる硬変様をなす.
➋発症機序・病態生理
大酒家のうち膵炎を発症するのは2~5%程度に過ぎず,慢性膵炎の発症には遺伝的素因とアルコール,喫煙などの環境因子間の相互作用が重要と考えられている.その発症機序は現在でも不明な点が多いが,膵腺房細胞や膵管系に病因を求める諸説がある.
生体内には異所性のトリプシノーゲン活性化,さらに活性化したトリプシンを介するほかの消化酵素の活性化による自己消化から膵臓を守るための防御機構が存在している.遺伝子異常などにより,トリプシンと自己防御機構とのバランスが崩れると,トリプシンの異所性,過剰な活性化が持続し膵炎発症に至ると考えられている.膵炎の反復は,コラー