診療支援
治療

2 1型糖尿病
type 1 diabetes mellitus
池上 博司
(近畿大学教授・内分泌・代謝・糖尿病内科)

疾患を疑うポイント

●典型例では口渇,多飲,多尿,体重減少で急性発症し,ケトーシス,ケトアシドーシスに陥る.

●若年者に多いとされてきたが,成人・高齢者も含めてあらゆる年齢層に起こりうる.

学びのポイント

●インスリン産生細胞である膵β細胞が破壊されることにより発症する糖尿病.絶対的なインスリン欠乏に陥り,インスリンを投与しなければ生命を維持できないインスリン依存状態になる.

●成因の多くは自己免疫による膵β細胞の破壊.発症初期には末梢血中に膵島抗原に対する自己抗体(膵島関連自己抗体)が証明されることが多い.

●急性発症1型糖尿病(典型例)に加えて,短期間で急激に膵β細胞が破壊される劇症1型糖尿病,比較的ゆっくりと破壊が進む緩徐進行1型糖尿病がある.

▼定義

 膵β細胞の破壊性病変によりインスリンの欠乏が生じて発症する糖尿病.通常はインスリンの絶対的欠乏に陥り,インスリン投与なしでは生命を維持できないインスリン依存状態になる.

▼病態(図6-5,6)

 成因の多くは自己免疫である.なりやすい体質(遺伝因子)の人になんらかの誘因(環境因子)が働いて,膵β細胞を標的とする自己免疫が惹起され,細胞性免疫によって膵β細胞が破壊される(図6-5).遺伝因子ではヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)の関与が最も強い.環境因子はウイルス感染などの関与が示唆されているが詳細は明らかでない.

 インスリン産生細胞である膵β細胞が破壊されると,インスリンが絶対的に欠乏する.インスリンは糖質をはじめとする栄養素をエネルギーとして全身の臓器で利用するために必須のホルモンである.このインスリンが欠乏するため,糖質をエネルギーとしてうまく利用できず,全身倦怠感,易疲労感が生じる(図6-6).組織で利用できない糖分が血中にあふれるため血糖値が著明に上昇,余った糖分が尿から排泄されるた

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