診療支援
治療

3 乳酸アシドーシス
lactic acidosis
廣田 勇士
(神戸大学医学部附属病院・糖尿病・内分泌内科講師)
小川 渉
(神戸大学大学院教授・糖尿病・内分泌内科学)

疾患を疑うポイント

●組織低酸素を伴う循環不全状態に伴うことが多く,消化器症状,過呼吸,意識障害をきたした際には乳酸アシドーシスを疑う.

学びのポイント

●糖尿病自体が乳酸アシドーシスのリスクであるが,糖尿病では種々の乳酸アシドーシスのリスクが併存しうる.

●ビグアナイド薬内服時には乳酸アシドーシスのリスクが上昇する.

▼定義

 乳酸の産生過剰や代謝障害により,血中に乳酸が増加する結果,代謝性アシドーシスをきたした状態である.

▼病態

 心臓,脳,骨格筋,赤血球などにおいて解糖が行われており,解糖の最終産物であるピルビン酸より乳酸が産生されている.好気的条件下であれば,ピルビン酸はミトコンドリアに入り,その後クエン酸回路にて代謝される.しかし,嫌気的条件下であれば乳酸産生が増加する.また,産生された乳酸の大部分は肝臓に取り込まれ代謝される.乳酸の産生と代謝のバランスが産生過剰に傾いた場合に,乳酸アシドーシスを発症する.酸素供給と乳酸代謝の関係から,乳酸アシドーシスは後述するようにA型とB型に分類される.

▼分類

 乳酸アシドーシスは組織の低酸素や循環不全を伴ったA型と伴わないB型に分類される(表6-12).糖尿病そのものはB1に分類されるが,インスリン欠乏状態ではピルビン酸脱水素酵素(pyruvate dehydrogenase:PDH)活性の低下などにより肝臓・骨格筋での乳酸代謝が低下し,産生の亢進も起こるため乳酸アシドーシスを発症しやすい状態にある.また,糖尿病では血管障害から組織の血流障害をきたしやすくA型のリスクも伴っている.ビグアナイド薬による乳酸アシドーシスはB2に分類される.ビグアナイド薬による乳酸アシドーシスはミトコンドリア代謝の障害と考えられており,肝・腎機能の低下,心機能の低下などが伴っていなければ,その発生率は高くない.

▼診断

 一般的に,血中乳酸濃度が5mmol/L(4

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