疾患を疑うポイント
●肝型糖原病では,肝腫大・低血糖・発育障害が起こる.
●筋型糖原病では,運動時の筋痛・筋力低下・運動不耐性が起こる.
●糖原病のタイプによって異なるが,肝腫大・低血糖や筋力低下に着目して酵素活性測定や遺伝子検査を行う.日本人での頻度は糖原病Ⅰ型が最も多く,続いてⅡ型,Ⅲ型の順.
学びのポイント
●グルコース⇄グリコーゲン代謝経路に先天的異常がある疾患群.
●代謝経路のそれぞれの酵素に異常があると別の疾患になる.
●主にグリコーゲンが蓄積する臓器によって肝型と筋型に大別する.
●診断には酵素活性測定と遺伝子変異の同定を行う.
▼定義
グリコーゲンの合成と分解にかかわる蛋白質の先天性代謝異常症.「糖原」はグリコーゲンを指し,グリコーゲン蓄積病である.グリコーゲン代謝は主に肝臓と筋肉で行われているため,肝臓や筋肉に正常あるいは異常なグリコーゲンが蓄積して臓器障害を惹起する.
グリコーゲン代謝に関与した酵素の先天的欠損症.発見された順番にⅠ~Ⅸ型の番号,または発見者の名前で呼称されている.原因となっている遺伝子による分類も併用されている(表6-21図).
▼病態
グリコーゲンが臓器に蓄積する.主にグリコーゲンが蓄積する臓器によって肝型と筋型に大別するが,肝・筋の両方に蓄積する疾患(糖原病Ⅲa型)や腎臓にも蓄積する疾患(糖原病Ⅰ型)もある.逆に,グリコーゲンが減少する疾患(糖原病0型)もある.
➊肝障害
肝型ではグリコーゲン蓄積により小児期から肝腫大・肝機能異常が起こる.Ⅰa型では肝腺腫が合併しやすい.Ⅲ型では肝硬変に進行することがあり,肝癌も発生する.Ⅳ型は劇症肝炎様になり予後不良である.Ⅵ型は軽度の肝腫大のみで予後良好である.
➋腎障害
Ⅰa型では成人後に尿蛋白,慢性腎不全になることがある.
➌筋障害
筋型では運動不耐性,筋力低下,筋萎縮が起こる.病型によっては心筋症が起こる.
➍高尿酸