診療支援
治療

(2)家族性高コレステロール血症
familial hypercholesterolemia(FH)
石橋 俊
(自治医科大学教授・内分泌代謝学)

疾患を疑うポイント

●重症な高コレステロール血症,角膜輪,腱黄色腫,早発性冠動脈疾患を契機に疑う.一定の年齢以上ではアキレス腱肥厚の診断特異度が高い.高コレステロール血症や早発性冠動脈疾患の家族歴も重要.

学びのポイント

●最も高頻度の単一遺伝子疾患であるにもかかわらず,低い診断率が問題視されている.

●7~8割の症例においてLDLRPCSK9の変異が同定できる.

●スタチンや抗PCSK9抗体による早期からの治療によって冠動脈疾患の予防が期待できる.

●ホモ接合体にはLDLアフェレシスが有効.

▼定義

 高LDLコレステロール血症が家系内に集積する常染色体遺伝性の疾患.大部分は常染色体優性遺伝を示す.早発性冠動脈疾患と腱・皮膚黄色腫を高率に合併する.

▼病態

 ホモ接合体(homozygous FH:HoFH)は出生時からLDL-Cが著増し,遅くとも4歳までに皮膚黄色腫が出現し,腱黄色腫・角膜輪・全身の動脈硬化が小児期から進行し,未治療例は30歳までに心筋梗塞を発症する.大動脈弁上狭窄も高率に合併する.総コレステロール値は600~1,200mg/dLに達する.ヘテロ接合体(heterozygous FH:HeFH)はより軽症であり,角膜輪・腱黄色腫は20歳前後から出現し,早くて30歳代で冠動脈疾患を発症する.総コレステロール値は350mg/dL前後である.

 肝臓における低密度リポ蛋白受容体(LDL receptor:LDLR)の機能低下の結果,LDLの血中からの消失速度が遅延する.LDLの前駆体である中間密度リポ蛋白(IDL)が肝臓で取り込まれない結果,IDLからLDLへの変換が亢進し,LDLの合成率も増加する.PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)は肝臓からの分泌蛋白であり,LDLとともにLDLRに結合し,LDLRのリサイク

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