疾患を疑うポイント
●HDL-Cが80~250mg/dLと高値.
学びのポイント
●わが国における高HDL-C血症の大部分はCETP欠損症.
●高HDL-C血症を診たら原発性胆汁性肝硬変,甲状腺機能低下症などの二次性疾患を除外し,CETP活性・蛋白量を測定して原因を検索.
●CETP欠損症では動脈硬化合併例が認められる.
●ほかに高HDL-C血症をきたす非常にまれな疾患として,家族性肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase:HTGL)欠損症がある.
▼定義
コレステリルエステル転送蛋白(cholesteryl ester transfer protein:CETP)欠損症はCETPの欠損により高HDL-C血症をきたす疾患.
▼病態
CETPはリポ蛋白間の脂質の転送を担う蛋白である.CETPはコレステリルエステル(cholesteryl ester:CE)をHDLからアポリポ蛋白Bを含有するリポ蛋白に転送し,それと引き換えに中性脂肪(triglyceride:TG)をHDLへと転送する.CETPの欠損により転送が阻害されるため,高HDL-C血症および低LDL-C血症を呈する.CEに富んだ大型のHDLの出現が特徴的である.
▼疫学
CETP遺伝子変異として,イントロン14の5'ドナーサイトのGからAへの変異(日本人の2%)とエクソン15のミスセンス変異(日本人の7%)の頻度が高い.また中等度高HDL-C血症(≧80mg/dL)患者の31%,高度高HDL-C血症(≧100mg/dL)患者の62%にCETP遺伝子変異を認め,わが国においてCETP欠損症は高HDL-C血症の主要な原因と考えられる.
▼診断
高HDL-C血症を認める症例において二次性疾患を除外し,CETP活性,蛋白量を測定する.
▼治療・予後
従来CETP欠損症は高HDL-C血症を呈し動脈硬化予防
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