診療支援
治療

(1)家族性低βリポ蛋白血症
familial hypobetalipoproteinemia
井出 佳奈
(千葉大学大学院・内分泌代謝・血液・老年内科学)
横手 幸太郎
(千葉大学大学院教授・内分泌代謝・血液・老年内科学)

▼定義

 家族性に低βリポ蛋白血症をきたす常染色体共優性遺伝疾患である.低βリポ蛋白血症とは血清TC値,LDL-C値,アポリポ蛋白B(アポB)値がおのおの5パーセンタイル未満と定義され,血清TC値150mg/dL未満,LDL-C値70mg/dL未満,アポB値50mg/dL未満程度に相当する.

▼病態

 原因としてはアポB(APOB)遺伝子変異によるものが代表的であるが,protein convertase subtilisin kexin 9(PCSK9),angiopoietin-like 3(ANGPTL3)遺伝子変異によるものも近年報告されている.アポB変異では,正常アポBの37%の分子量しかない短縮型アポBが生成される結果,VLDLやカイロミクロンの分泌障害と異化亢進をきたし,低LDL-C血症となる.一方PCSK9はLDL受容体の異化を担う酵素で,その機能欠失変異では,LDL受容体が分解されないためその機能が亢進し,LDLの異化亢進により低LDL-C血症をきたす.またANGPTL3はリポ蛋白リパーゼと内皮リパーゼ活性を阻害するため,ANGPTL3の機能欠失変異によりそれらの活性が亢進し,低脂血症を呈する.

▼疫学

 ヘテロ接合体の頻度は500~1,000人に1人と高頻度であるが,ホモ接合体はきわめてまれである.

▼診断

 一親等内に低脂血症を認める低LDL-C血症では本症の可能性が高い.短縮型アポBの有無をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動などで確認する.短縮型アポBが検出されない場合は,より短い短縮型アポBである場合とアポB遺伝子以外によるものの場合がある.APOBPCSK9ANGPTL3の遺伝子変異を検索する.

▼治療

 ヘテロ接合体では積極的な治療は不要だが,ビタミンE低値の場合や神経症状が疑われる際にはビタミンEを投与する.ホモ接合体ではビタミンEの補充療法が重要で

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