▼定義
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(lecithin cholesterol acyltransferase:LCAT)遺伝子の異常に起因する常染色体劣性遺伝性疾患である.血清コレステリルエステルの著明な低下を伴う古典的な家族性LCAT欠損症とコレステリルエステル比の低下を伴わない魚眼病(fish eye disease)とに分けられる.
▼病態
LCATはリポ蛋白に含まれる遊離コレステロールのエステル化に重要な酵素である.LCATの欠損により,血清TCに占める遊離コレステロールの比率が増加する.また成熟HDLの形成が阻害され,低HDL-C血症をきたす.さらに組成の変化した異常なリポ蛋白が組織に沈着することで腎障害や溶血性貧血,角膜混濁(図6-22図)をきたす.部分欠損症とされる魚眼病では,HDL粒子のコレステロールをエステル化するαLCAT活性は欠損するが,VLDLやLDL粒子において働くβLCAT活性は保たれており,高度角膜混濁とHDL-C低下以外には臨床所見を呈さない.
▼疫学
有病率は100万人に1人未満とまれであり,世界で80家系程度が報告されている.
▼診断
原発性高脂血症調査研究班の診断基準に基づき診断する.若年性の角膜混濁,HDL-Cの著しい低下,コレステリルエステル比の低下を認める場合にLCAT活性測定およびLCAT遺伝子解析を行う.
▼治療
有効な治療法はない.腎機能障害のある症例では,食事性脂肪の摂取制限やARB,ACE阻害薬などの薬物療法が有効であるという報告がある.根治療法として,わが国でLCAT遺伝子を導入したヒト前脂肪細胞による治療法の治験が進行中.
▼予後
進行性の腎障害が予後を規定し,40~50歳で末期腎不全に至る.角膜混濁により著明な視力低下をきたし,角膜移植が必要となる例もある.若年性冠動脈疾患を伴う症例も報告されており動脈硬