診療支援
治療

1 神経性食欲不振症
anorexia nervosa
緒方 大聖
(九州大学大学院・病態制御内科学)
小川 佳宏
(九州大学大学院教授・病態制御内科学)

疾患を疑うポイント

●10~20歳代の若年女性に好発する.

●著しいやせと無月経がみられる.

●やせ願望と肥満恐怖を有し,病識は欠如している.

▼定義

 食行動異常(摂食制限,過食・排出など)に基づく著しいやせや低栄養をきたし,これに伴う身体的異常や精神・心理的異常をきたす疾患である.強いやせ願望や体重増加に対する病的な恐怖,ボディイメージの障害がみられ,病識が欠如していることが多い.

▼病態

 いまだ病態の解明には至っていないが,生物-心理-社会的因子の相互作用による多因子疾患と考えられている.社会・文化的要因(やせ礼賛や肥満蔑視の風潮),家庭や周辺環境,心理的要因(否定的な自己評価や強迫性パーソナリティ傾向,完璧主義など),生物学的要因(セロトニン系を中心とした脳内神経系の変化や遺伝的要因など)といった多様な要因が発症や増悪に複雑に関与している.

▼疫学

 先進国に多い疾患であり,主に10~20歳代の若年女性に好発する.1998年の厚生省調査研究班の報告では,年間有病率は12,500人(人口10万対8.3~11.9)であり,1980年と比較して約5倍と急速に増加している.近年の若年女性における動向は厚生労働省の「健やか親子21」の最終報告にみられ,思春期やせ症の前段階である不健康やせが2002年(中学3年13.4%,高校3年5.5%)から2013年(中学3年20.5%,高校3年19.6%)で増加傾向を示している.

▼分類

 2013年に米国精神医学会より公開されたDSM-5では神経性過食症や過食性障害などとともに摂食障害に分類される.日本精神神経学会により作成された「DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン」では,anorexia nervosaは神経性やせ症/神経性無食欲症と訳され,下位分類として摂食制限型と過食・排出型に分類される.

▼身体所見,検査所見

 著明なやせがあり,バイタルサイン異常(

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