疾患を疑うポイント
●どの患者にも生じうる非特異的な検査異常.
●軽度ならば無症候であるが,高度な低蛋白血症では浮腫,胸水,腹水がみられる.
学びのポイント
●低蛋白血症をきたす成因として肝臓での蛋白合成低下,異化亢進,体内分布の変化,体外漏出が挙げられる.
●血清中の主たる蛋白はアルブミンであり,低蛋白血症の多くは低アルブミン血症を呈する.
●血漿膠質浸透圧はアルブミンで維持されているため,低アルブミン血症で血漿膠質浸透圧が低下すると,血管内の水は血管外に移動し浮腫,胸水,腹水を生じる.最重症例では循環血漿量減少によって血圧が低下する.
●低アルブミン血症自体は有害でないため,まず原疾患を治療し病態を改善することが優先.
▼定義
血清総蛋白濃度が低下した状態.血清蛋白の約60%はアルブミンであることから,低蛋白血症は多くの場合アルブミンの低下を反映する.
▼病態
蛋白はアミノ酸のポリペプチドであり,蛋白合成に必要なアミノ酸は肝臓のアミノ酸プールから供給される.血清蛋白の変動は以下の4項目で調整されている(図6-30図).①蛋白合成:食物から摂取した蛋白は消化管でアミノ酸に分解される.アミノ酸は小腸粘膜で吸収され門脈から肝臓に運ばれて蛋白合成に利用される.②蛋白の異化,③蛋白の体内分布:蛋白は血管内のほか間質液などの血管外に分布する.④蛋白の体外喪失:尿や便により喪失される.これらのいずれかが障害されると低蛋白血症を呈する.
ヒト血漿中には少なくとも100種類以上の蛋白成分が存在している.血清蛋白を電気泳動で分離すると,アルブミン,α1・α2・β・γグロブリンの5つに分離され,種々の疾患で蛋白分画に特徴的な変化がみられる(表6-40図).このうちアルブミンは血漿膠質浸透圧の維持および物質の担体として重要な機能がある.正常血漿の膠質浸透圧の75%がアルブミンによって維持されており,アルブミン1
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