疾患を疑うポイント
●小児期に発症する高アンモニア血症の原因は,尿素サイクル異常症をはじめとする先天代謝異常症のほか,門脈体循環シャント,重症感染症や薬物など多岐にわたる.高アンモニア血症によって,傾眠,不活発,昏睡,けいれん,失調,嘔吐や食欲不振などがみられる.これらの非特異的な症状がみられた際に,血中アンモニア値を測定することが最も重要.
学びのポイント
●尿素サイクルは,シトルリン,アルギニノコハク酸,アルギニン,オルニチンの4種類のアミノ酸を変換する過程でアンモニアとアスパラギン酸由来の窒素を尿素に変換し体外へ排泄する代謝経路.
●高アンモニア血症による急性の中枢神経障害が主な症状.
▼定義
尿素サイクルにおける尿素を生成する過程の酵素の欠損によって高アンモニア血症を呈する.
▼病態
主に肝臓においてアンモニアから尿素を産生する経路であり,オルニチン,シトルリン,アルギニノコハク酸,アルギニンの4つのアミノ酸から構成されている.尿素サイクル異常症では,この尿素サイクルにおける尿素を生成する過程の遺伝的障害によって高アンモニア血症を呈する.尿素サイクルにかかわる酵素の欠損によりNAGS欠損症,CPS1欠損症,OTC欠損症,シトルリン血症I型,アルギニノコハク酸尿症,高アルギニン血症をきたす.
▼疫学
OTC欠損症はX連鎖性遺伝形式,その他は常染色体劣性遺伝形式であり,尿素サイクル異常症全体として,約4万人に1人の疾患頻度である.OTC欠損症は女性にも発症することには注意が必要である.
▼診断・治療
意識レベルの変化(傾眠,不活発,昏睡),けいれん,失調,嘔吐や食欲不振などがみられた際に,血中アンモニア値を測定することが最も重要である.診断には,①血中アンモニアの高値を確認したうえで,②血中・尿中アミノ酸分析を行う.シトルリンの低値はCPS1欠損症,NAGS欠損症,OTC欠損症の診断に
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