診療支援
治療

(4)APRT欠損症
adenine phosphoribosyltransferase deficiency
植木 将弘
(北海道大学病院・小児科)
有賀 正
(北海道大学名誉教授)

疾患を疑うポイント

●乳幼児期や小児期に診断される尿路結石症.

▼定義

 adenine phosphoribosyltransferase(APRT)をコードするAPRT遺伝子の異常により酵素活性が低下もしくは欠失することで発症する常染色体劣性(潜性)遺伝疾患である.

▼病態

 APRTの活性低下により2,8-ジヒドロキシアデニン(dihydroxyadenine:DHA)が過剰に産生され,難溶性のDHAが尿中に排泄されて結晶化し,尿路結石症を発症する.診断時期は乳児期~成人と幅広い.また,結石症の反復などにより,慢性腎不全の原因となる.

▼分類・疫学

 APRT酵素活性が完全に欠損するタイプ1欠損症と部分欠損のタイプ2欠損症がある.日本人では両者とも確認されており,タイプ2は日本人に比較的特徴的とされる.日本人ではヘテロ接合体の頻度は約1%とされ,本疾患のうちタイプ1が約22%,タイプ2が78%とされている.

▼診断

 特徴的な丸く,褐色のDHA結晶が尿中に認められ,APRT遺伝子解析で確定診断する.また,末梢血T細胞のアデニン類似体への感受性試験も有用とされている.赤血球のAPRT酵素活性は日本人に多いタイプ2の原因となる変異体のホモ接合とタイプ1の原因となるヘテロ接合の酵素活性がほぼ同等であるため,酵素活性測定による保因者と患者の区別は日本人では困難である.

鑑別診断疾患の除外

 DHA結石はX線透過性であり,同様の性質をもつ尿酸結石やキサンチン結石をきたす疾患との鑑別が重要である.具体的にはLesch-Nyhan症候群(HPRT欠損症)やPRPP合成酵素亢進症,キサンチン尿症などが挙げられる.

▼治療・予後

 アロプリノールやフェブキソスタットによりアデニンからDHAへの変換が阻害され,結石を予防することができる.低プリン食や脱水回避も有用である.生成された結石は体外衝撃波結石破壊に

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