診療支援
治療

4 亜鉛欠乏症候群(腸性肢端皮膚炎)
zinc deficiency syndrome (enteropathic acrodermatitis syndrome)
髙後 裕
(国際医療福祉大学教授・消化器内科学)

疾患を疑うポイント

●乳児から高齢者までいずれでも発症しうる.

●亜鉛欠乏による症状を示し,血清亜鉛値が低値をとる.

●亜鉛投与により,症状が改善される.

▼定義

‍ 亜鉛欠乏による味覚障害,皮膚炎,口内炎,脱毛症,難治性の褥瘡,食欲低下,発育障害,性腺機能不全,易感染性,貧血,不妊症などの症状の1つ以上を示し,血清亜鉛値が60μg/dL未満で,かつ亜鉛投与により,症状が改善される.

▼病態

 亜鉛は,体内に2g存在し,200種類以上の亜鉛含有酵素の活性中心として働くほか,細胞の分裂,増殖,遺伝子制御に必須の金属である.細胞内情報伝達や免疫応答も担う.先天性では,ZIP4遺伝子異常による腸性肢端皮膚炎があり,乳児で発症し,皮膚炎,脱毛,下痢が三徴である.

▼疫学

 亜鉛欠乏は通常起こりえないとされていたが,乳児から高齢者まで広く認められる.遺伝性の先天性腸性肢端皮膚炎は,きわめてまれで,わが国では4家系認め

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