疾患を疑うポイント
●小児期から反復する呼吸器感染や副鼻腔炎,膵外分泌不全による消化吸収不良(脂肪便や臭気)や栄養障害,便秘傾向.
学びのポイント
●先天的に,全身の外分泌腺,上皮組織で,クロライドと水の輸送障害が起こり,管腔内容が粘稠となって閉塞や感染をきたしやすくなる.
●汗中のクロライド濃度が高い.
●欧米人に比べて日本人の発症率はきわめて低い.
●最近での50%累積生存期間は24年程度と延びていて,成人症例も増加している.
▼病態
cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遺伝子の変異により,気道,膵臓,肝臓(胆道),腸管,汗腺などで上皮を介するクロライド,水の輸送障害が生じ,全身の分泌液/粘液が粘稠となり,管腔が閉塞して感染をきたす.7番染色体に異常があり,常染色体劣性である.遺伝子多型が多岐に及ぶ.新生児期で胎便性イレウスを呈することがある.
呼吸器系異常はほぼ全例の患者でみられ,気管支炎の反復,膿性痰の排出,咳嗽から呼吸不全に至る.膵外分泌不全では,膵の萎縮をきたし,消化酵素の不足からの脂肪便,栄養障害,成長障害や低栄養となり,少数だが糖尿病の発症もある.約20%の症例で胆汁うっ滞性肝硬変に至る.
▼疫学
欧米人では出生1万人に1人以上であるが,日本では,35万人に1人とされる.
▼診断
難病に指定され,臨床症状,検査所見,鑑別診断による他疾患の除外,および遺伝学的検査からなる診断基準がある.臨床症状では,膵外分泌不全,呼吸器症状,胎便性イレウス,家族歴の4項目を評価する.臨床検査としては,①汗中塩化物イオン濃度と,②膵外分泌機能をみるBT-PABA(ベンゾイルチロシル・パラアミノ安息香酸)試験と,国内ではまだ一般的でない便中エラスターゼ試験がある.鑑別として,びまん性汎細気管支炎,若年性膵炎,原発性線毛機
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