診療支援
治療

3 高プロラクチン血症
hyperprolactinemia
髙橋 裕
(神戸大学大学院准教授・糖尿病・内分泌内科学)

疾患を疑うポイント

●若い女性に多くみられ,乳汁分泌,無月経をきたす.

●男性の場合には性欲低下,勃起障害などの性腺機能低下症に加えて,マクロプロラクチノーマの局所症状としての視力・視野障害,頭痛などでみつかる場合が多い.

学びのポイント

●高プロラクチン血症においては乳汁分泌と性腺機能低下症をきたす.

●最も多い原因は抗ドパミン作用のある薬剤によるものである.

●その他,プロラクチノーマ,視床下部・下垂体茎の障害,原発性甲状腺機能低下症,腎不全,胸壁に対する刺激などで上昇する.

●高プロラクチン血症にもかかわらず,無症状の場合には抗プロラクチン抗体によるマクロプロラクチン血症を考慮する.

▼定義

 血中プロラクチン値が複数回基準値(20ng/mL)以上である.

▼病態

 プロラクチン(prolactin:PRL)は,生理的には乳腺の発達を促し乳汁分泌を促進するとともに,視床下部におけるキスペプチン(メタスチン)分泌を抑制することによって,性腺機能を抑制し授乳中の妊娠を妨げる.PRLは主に視床下部からのドパミンによってD2受容体を介して抑制性に調節されている.そのため視床下部や下垂体茎の障害によってほかの下垂体ホルモンの分泌は低下するが,PRLは上昇することが多い.薬剤性としては,抗ドパミン作用のある多くの中枢神経薬(抗精神病薬,抗うつ薬),降圧薬,胃腸薬,抗潰瘍薬および直接PRL分泌細胞を刺激する避妊薬などがある.原発性甲状腺機能低下症,胸部外傷,精神疾患,腎不全などにおいてもPRL濃度上昇がみられる.原発性甲状腺機能低下症においてはフィードバックによるTRH分泌亢進がPRLを刺激することによる.胸部外傷,帯状疱疹などの胸椎1~6の神経刺激はPRL分泌を促進する場合がある.原因が明らかでない特発性の高PRL血症も存在するが,腫瘍が画像で検出できないプロラクチノーマの可能性も考えられている.ごく

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