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治療

6 成長ホルモン分泌不全性低身長症
short stature with growth hormone deficiency(GHD)
井原 健二
(大分大学教授・小児科学)

疾患を疑うポイント

●四肢短縮を伴わない低身長で3歳以降の成長率の低下が特徴とされる.

●乳幼児期に低血糖症を認めることがある.

▼定義

 成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)は,脳下垂体からのGH分泌不全による低身長症である.

▼病態

 GHDにより成長率が低下し,同性・同年齢の集団のなかで低身長となる.重症型GHDでは乳幼児期に低血糖などの糖代謝異常の症状を伴うことがある.

▼疫学

 頻度は,6~17歳の学童期で1万人あたり男児2.14人,女児0.71人,男女比は特発性2.2:1,器質性1.2:1で特発性は男児に多いと報告されている.

▼分類

 GHDの原因は器質性と特発性に大別される.器質性GHDとして頭蓋咽頭腫,胚芽腫,くも膜囊胞など脳の器質的な異常,およびそれらに対する外科治療や放射線治療などによる二次性も含まれる.また,新生児仮死などの周産期異常や下垂体の発生・分化に関与する遺伝子異常が原因となる場合があり,頭部MRI検査で,下垂体低形成や形成異常を認める.特発性に分類される場合は,頭部MRIなどの画像上に異常を認めないがGHのみ分泌不全を認める.その他にはGH-IGF-Ⅰ系の受容体やシグナル伝達分子の遺伝子異常によるGHDも知られている.

▼診断

‍ GH分泌刺激試験によりGH分泌不全の証明と成長障害や低血糖などの臨床所見により診断する.血中IGF-Ⅰ低値はGHDの可能性を示唆するが,必ずしも診断に必須ではない.

 GHDの診断基準は,間脳下垂体障害に関する調査研究班の「成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断の手引き」で定められており,平成24年度に改訂された診断基準を診断の手引きに示されている.同性・同年齢の平均身長より2標準偏差(SD)以上下回る成長障害があり,かつ,インスリン負荷,アルギニン負荷,L-ドパ負荷,クロニジン負荷,グルカゴン負荷試験またはGHRP-2負荷試験のうち,

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