診療支援
治療

7 思春期早発症
precocious puberty
井原 健二
(大分大学教授・小児科学)

疾患を疑うポイント

●年齢不相応の二次性徴である.男女別の標準的な思春期発来時期を理解する必要がある.

学びのポイント

●治療の目的を理解する.原疾患の治療,成人身長低下の防止,精神的成熟と身体成熟の不均衡の是正,の3点である.

▼定義

 思春期早発症は,年齢不相応に早い時期に性ホルモンの分泌または曝露により性成熟徴候が出現した状態を指す.二次性徴の発来時期は,性別や人種などの遺伝的背景や食文化などの環境因子により幅があるため,その診断にあたっては集団毎の基準に当てはめて評価する必要がある.二次性徴の開始時期の個人差は,各集団の平均開始年齢からほぼ正規分布を示すと推定されることから,平均から2SD,または95パーセンタイルよりも早期に二次性徴が開始した場合に思春期早発症と定義する.国際的には男性で9歳,女性では8歳以前に二次性徴の徴候を認める場合を指す.

▼分類・発生頻度

 本疾患は,ゴナドトロピン依存性思春期早発症とゴナドトロピン非依存性思春期早発症に大別される.ゴナドトロピン依存性思春期早発症は,中枢のゴナドトロピン放出ホルモン分泌亢進から始まるゴナドトロピン分泌促進を認めるもので,脳内のホルモン量の変化に起因する.一方,ゴナドトロピン非依存性思春期早発症は,脳内のホルモン分泌亢進がない状態で,末梢の内因性性ホルモンの分泌亢進あるいは外因性の性ホルモンまたは類似物質の曝露により二次性徴を認めるものであり,脳下垂体からのゴナドトロピン分泌は抑制される.

 思春期早発症の定義によると,同性・同年齢の約2.3パーセンタイル未満が思春期早発症と診断される可能性があるが,実際に疾患として診療対象となるのはその一部と考えられる.また女児では特発性ゴナドトロピン依存性思春期早発症の90%に対し,男児では約50%と報告されている.

▼診断

 国内においては2004年に厚生労働省から出された「中枢性思春期早

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