疾患を疑うポイント
●甲状腺に自発痛,圧痛を認める.
●硬い甲状腺腫を触知する.
●破壊性甲状腺中毒症をきたす.
学びのポイント
●「喉が痛い」との主訴に安易に上気道感染症と考えると見落としてしまう.
●有痛性甲状腺腫を認める疾患の1つである.甲状腺を触診すれば疑いをもてる.
●自然治癒が期待できる疾患であるが,対症療法を要することが多い.
●甲状腺中毒症は可逆性.甲状腺中毒症の原因として最も多いBasedow(バセドウ)病を鑑別する.
▼定義
甲状腺に生じる原因不明の急性炎症性疾患.急性期には有痛性甲状腺腫と破壊性甲状腺中毒症を示す.自然治癒する疾患であるが,まれに永続性甲状腺機能低下症に移行する.de Quervain(ドゥ・ケルヴァン)甲状腺炎または肉芽腫性甲状腺炎ともいう.
▼病態
上気道感染症が先行することがある.亜急性甲状腺炎の急性期には甲状腺の痛みを伴う部が硬く腫大し,経過中に痛みの部位が移動することがある(creeping現象).炎症による組織破壊のために破壊性甲状腺中毒症を伴う.前頸部の痛み,発熱以外に甲状腺中毒症による動悸などの症状をきたすことがある.原因は明らかでないがHLA Bw35との関連が報告されている.
▼疫学
男女比は約1:7で女性に多い.小児,若年者と高齢者にはまれな疾患.甲状腺中毒症の原因としてはBasedow(バセドウ)病,無痛性甲状腺炎に次いで多い.甲状腺に痛みを生じる疾患としては最も多いものである.
▼診断
日本甲状腺学会が亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドラインを示している(表7-24図).有痛性甲状腺腫,CRPまたは赤沈高値,FT4高値,TSH低値,甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域(図7-17図)が診断の根拠となる.赤沈は1時間値100mm以上の高度促進を示す例もあるが,CRPが10mg/dLを超える例は少ない.白血球数は必ずしも増加しな