疾患を疑うポイント
●小児~高齢者のいずれの年齢でも発症しうる.
●しびれ,テタニー,全身けいれんなどで発症する.
●低Ca血症と正~高リン血症が存在する.
●頸部手術などの既往があれば二次性を疑う.
学びのポイント
●副甲状腺機能低下症は副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌低下または作用不全で起こる.
●生命予後は良好であるが,重篤なテタニーを呈し緊急治療を要することもある.また,軽度の低Ca血症でも,しびれ感や思考力低下などにより日常生活の質が低下する.
●てんかんなどと誤診されている場合もある.
▼定義
副甲状腺(上皮小体)機能低下症は,PTH作用低下に基づき,低Ca血症と正~高リン血症を呈する疾患である.
▼病態
副甲状腺からのPTH分泌が低下したPTH不足性副甲状腺機能低下症と,標的臓器のPTHに対する反応性が低下した偽性副甲状腺機能低下症(pseudohypoparathyroidism)との2つに大別される.PTH不足性には頸部手術や放射線照射などによる二次性が多い.その他種々の遺伝子異常や低Mg血症などが原因となる.原因不明なものは特発性副甲状腺機能低下症(idiopathic hypoparathyroidism)とよぶ(表7-27図).偽性では腎近位尿細管におけるPTH受容体からのシグナル伝達機構の異常により,リン利尿や活性型ビタミンD産生が障害される.
▼疫学
国内の特発性副甲状腺機能機能低下症の患者数は約900人,偽性は約400人と推定されている.国内の二次性の患者数は不明であるが,PTH不足性の約3/4は術後性と考えられる.甲状腺全摘術などの頸部手術の数%に永続的な副甲状腺機能低下症が起こる.
▼分類
PTH不足性の多くを占める二次性の原因としては甲状腺全摘術などの頸部手術や放射線治療,ヘモクロマトーシスなどがある(表7-27図).低Mg血症はPTH分泌不全のみならずPTH
関連リンク