診療支援
治療

4 腫瘍性骨軟化症
tumor-induced osteomalacia,oncogenic osteomalacia
福本 誠二
(徳島大学先端酵素学研究所・藤井節郎記念医科学センター特任教授)

疾患を疑うポイント

●骨痛や筋力低下を訴える患者では,鑑別に入れるべき疾患である.

学びのポイント

●QOLを重度に障害しうる疾患である.適切な診断,管理が行われないと,罹患患者は完全に寝たきりの状態となることもある.

●症状が非特異的であり,しばしば神経・筋疾患などと混同される.血中リン(P)濃度の測定・評価が行われないと,診断までに数年以上を要することもまれではない.

●本疾患患者は,腎近位尿細管P再吸収障害を伴う低P血症など,特徴的な生化学所見を呈する.

●原因腫瘍の完全摘除により,完治させうる疾患である.

▼定義

‍ 腫瘍随伴症候群の1つであり,原因腫瘍により分泌される線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)の作用で低P血症性骨軟化症が惹起される疾患である.小児期に発症した場合には,くる病の病態を示す.

▼病態

 FGF23は,主に骨細胞により産生され,腎近位尿細管P再吸収と,1,25-水酸化ビタミンD濃度低下を介した腸管P吸収の抑制により,血中P濃度を低下させるホルモンである.本症では原因腫瘍によりFGF23が異所性に産生され,低P血症から,骨石灰化障害を特徴とする骨軟化症やくる病が惹起される.本症の原因腫瘍は,病理学的にはphosphaturic mesenchymal tumor,mixed connective tissue variant(PMTMCT)とよばれる間葉系腫瘍が多い.PMTMCTの多くは良性であるが,10%程度転移を生じる悪性のものが報告されている.また結腸癌や卵巣癌など,上皮系悪性腫瘍による本症も報告されている.本症惹起腫瘍は1cm程度のものもまれではなく,しばしば骨中に存在することから発見が困難な場合が少なくない(図7-27).原因腫瘍は頭部や下肢に比較的多く認められるものの,全身どの部位にも発生しうる.

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