疾患を疑うポイント
●骨痛や筋力低下を訴える患者では,鑑別に入れるべき疾患である.
学びのポイント
●QOLを重度に障害しうる疾患である.適切な診断,管理が行われないと,罹患患者は完全に寝たきりの状態となることもある.
●症状が非特異的であり,しばしば神経・筋疾患などと混同される.血中リン(P)濃度の測定・評価が行われないと,診断までに数年以上を要することもまれではない.
●本疾患患者は,腎近位尿細管P再吸収障害を伴う低P血症など,特徴的な生化学所見を呈する.
●原因腫瘍の完全摘除により,完治させうる疾患である.
▼定義
腫瘍随伴症候群の1つであり,原因腫瘍により分泌される線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)の作用で低P血症性骨軟化症が惹起される疾患である.小児期に発症した場合には,くる病の病態を示す.
▼病態
FGF23は,主に骨細胞により産生され,腎近位尿細管P再吸収と,1,25-水酸化ビタミンD濃度低下を介した腸管P吸収の抑制により,血中P濃度を低下させるホルモンである.本症では原因腫瘍によりFGF23が異所性に産生され,低P血症から,骨石灰化障害を特徴とする骨軟化症やくる病が惹起される.本症の原因腫瘍は,病理学的にはphosphaturic mesenchymal tumor,mixed connective tissue variant(PMTMCT)とよばれる間葉系腫瘍が多い.PMTMCTの多くは良性であるが,10%程度転移を生じる悪性のものが報告されている.また結腸癌や卵巣癌など,上皮系悪性腫瘍による本症も報告されている.本症惹起腫瘍は1cm程度のものもまれではなく,しばしば骨中に存在することから発見が困難な場合が少なくない(図7-27図).原因腫瘍は頭部や下肢に比較的多く認められるものの,全身どの部位にも発生しうる.
関連リンク
- 臨床検査データブック 2023-2024/副甲状腺ホルモン関連蛋白インタクト〔PTHrP-intact〕《副甲状腺ホルモン関連蛋白〔PTHrP〕》 [保] 189点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/オステオカルシン〔OC〕《骨グラ蛋白〔BGP〕》 [保] 157点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/線維芽細胞増殖因子23〔FGF23〕 [保] 788点
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- 新臨床内科学 第10版/1 原発性副甲状腺機能亢進症
- 新臨床内科学 第10版/2 くる病・骨軟化症
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