診療支援
治療

1 褐色細胞腫,傍神経節細胞腫
pheochromocytoma/paraganglioma
田辺 晶代
(国立国際医療研究センター病院・糖尿病内分泌代謝科医長)

疾患を疑うポイント

●典型例では発作性の高血圧,頭痛,動悸などの症状を呈する.

●副腎や後腹膜の偶発腫瘍として発見されることが多い.

●症状を呈する腫瘍はほとんどが径3cm以上.

学びのポイント

●頻度の低い疾患であるが,高カテコールアミン血症を放置すると致死性不整脈や冠動脈攣縮による心筋虚血を発症し突然死や高血圧クリーゼ発症の危険がある.

●2017年に改訂されたWHO腫瘍分類ではすべての褐色細胞腫/傍神経節細胞腫は悪性腫瘍に分類され,病理所見には悪性度を記すことになった.

▼定義

 副腎髄質および交感・副交感神経節のクロム親和性細胞に発生する腫瘍.

▼病態

 約90%の症例では腫瘍がカテコールアミンを過剰産生し,心臓,血管系に分布する交感神経α,β受容体に作用し,血圧上昇,血管抵抗増大,循環血漿量減少,心拍数増加,不整脈などの循環動態の変化,高血糖,脂質異常症などの代謝異常,腸管蠕動低下のため重症便秘を引き起こす.

▼疫学

 高血圧の約0.5%とされる.男女差はなく,主に30~80歳に分布する.10%は小児例である.わが国における2009年の調査では推定罹患例は年間約3,000例,そのうち約300例が局所浸潤や遠隔転移を呈する悪性例である.生化学的あるいは病理学的に良悪性の鑑別診断がきわめて困難であり,遠隔転移が発見されて初めて悪性と診断される.単発の原発腫瘍を完全摘出した症例を含め約10~30%の症例は数年から数十年後に遠隔転移を呈することから,本症は潜在的に悪性であると認識されるようになり,2017年に改訂されたWHO腫瘍分類において全例が悪性腫瘍に分類されることになった.

 近年,約60%の症例で褐色細胞腫関連遺伝子の生殖細胞変異(germline mutation)や体細胞変異(somatic mutation)を認め,これらの遺伝子変異は孤発例でもみられることが報告されている(表7-4

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