疾患を疑うポイント
●最も一般的な症状は大きな腹部腫瘤による腹部膨満.
学びのポイント
●小児癌のなかで白血病,脳腫瘍についで頻度が高い.
●褐色細胞腫と同様にカテコールアミンを産生するが,血圧上昇,頻脈など心血管系への影響がみられることはまれ.
●早期発見は困難,約70%の症例は診断時に遠隔転移が存在する.
▼定義
胎生期の神経堤細胞由来の細胞の癌化により発生する悪性腫瘍.主に胎生期から新生児期に副腎髄質や交感神経節に発生する.
▼病態
カテコールアミンを産生するが褐色細胞腫のように血圧上昇,頻脈など心血管系への影響がみられることはまれ.腹部腫瘤および転移部位での腫瘤形成,浸潤により局所における各種症状を呈する.
▼疫学
米国では7,000人に1例の頻度で発生すると報告されている.小児癌の約10%を占め,白血病,脳腫瘍についで頻度が高い.わが国では小児慢性特定疾患治療研究事業の調査で年間約320例の新規症例が登録されている.診断時年齢は0歳が最も多く,ついで3歳,90%の症例が5歳未満である.一方,10歳以上で診断されることはまれである.約70%の症例は診断時に遠隔転移が存在する.一方,乳児では自然退縮する例もみられる.
▼診断
➊臨床症状
神経芽腫の発見契機となる主な症状は腹部腫瘤による腹部膨満であるが,無症状で偶発腫瘍として発見されることもある.実際には多くの症例が転移巣による局所症状や随伴症状で発見され早期発見は困難である.骨・骨髄への転移が多く,随伴症状として骨の疼痛,骨髄造血障害による易感染徴候,貧血症状,出血傾向や皮下出血斑がみられる.また,眼球後部への転移による眼球突出や眼窩周囲の皮下出血,頸部交感神経圧迫によるHorner(ホルネル)症候群,脊髄圧迫による神経症状などがみられる.まれに小脳性運動失調,眼球クローヌス,ミオクローヌスなどの腫瘍随伴神経所見を合併することがあり,な