診療支援
治療

2 多囊胞性卵巣症候群
polycystic ovary syndrome(PCOS)
久具 宏司
(都立墨東病院・産婦人科部長)

▼定義

‍ 月経異常多囊胞卵巣,高アンドロゲンやLH高値などの内分泌異常の3つを主たる徴候とする内分泌疾患.PCOSの疾患概念の歴史は,1935年にSteinとLeventhalにより発表されたStein-Leventhal(スタイン-リヴェンサール)症候群にさかのぼる.Stein-Leventhal症候群は,月経異常,多毛,肥満,両側卵巣腫大を主徴とし,卵巣の楔状切除を行うことにより妊孕性が回復すると報告された症候群である.類縁疾患の収集により,卵巣の多囊胞状変化が共通する徴候であることから,PCOSという疾患名となっている.しかしながら,内分泌学的な検索が進むにつれ,アンドロゲンやLHの分泌過剰,インスリン抵抗性の存在などが明らかとなり,現在では,PCOSという名称にもかかわらず,必ずしも卵巣に一義的な原因を有する卵巣の疾患とはいえない,ととらえられている.

▼病態

 PCOSは卵巣の形態的変化を映す病名であり,また,アンドロゲン過剰など,さまざまな所見を示すことが特徴であるが,病態の基礎はインスリン抵抗性の存在であることが解明された.

 インスリン抵抗性とは,「細胞,臓器,個体レベルでインスリンの各種の作用を得るのに通常以上のインスリンを必要とする状態」である.糖代謝についてインスリンの血糖調節作用の効きが悪くなった状態がインスリン抵抗性の状態と考えればよく,したがって膵臓からのインスリンの分泌は亢進し,高インスリン状態となる.高インスリン血症は,①卵胞莢膜細胞での17α-水酸化酵素活性を促進し,IGF結合蛋白(IGF binding protein:IGFBP)の産生抑制により血清IGF-Ⅰ生理活性を亢進させ,LHおよびIGF-Ⅰ刺激性の卵巣でのアンドロゲン産生過剰を促進する,②肝での性ホルモン結合グロブリン(sex hormone binding globulin:SH

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