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治療

5 膵・消化管神経内分泌腫瘍
neuroendocrine neoplasm of the pancreas and the gastrointestinal tract
髙野 幸路
(北里大学診療教授・内分泌代謝内科学)

▼定義

 アミンやペプチドなどの親水性ホルモンを産生し分泌顆粒に蓄え,開口放出でこれらを分泌する内分泌細胞を神経内分泌細胞とよぶ.神経内分泌細胞の分泌顆粒は電子顕微鏡で有芯小胞(dense core granule)という特徴的な形態を呈する(図7-44).クロモグラニンAなどの顆粒蛋白や開口放出に関与する共通の分子(シナプトフィジンなど)を発現している.神経内分泌腫瘍は神経内分泌細胞に由来する腫瘍である〔第5章「膵神経内分泌腫瘍」の項()も参照〕.

▼疫学

 日本での疫学研究では,年間10万人あたり2.69人の発症率である.欧米に比べ,中腸由来の神経内分泌腫瘍が少ないという特徴がある.

▼分類

 2017年改訂の膵神経内分泌腫瘍のWHO分類(表7-59)では組織型と増殖細胞の割合の2つの評価によって行われることになった.Ki-67指数が20より多い場合に,組織型での高分化と低分化を分けてNET G3とNECとした.この2つは予後や治療に対する反応性が異なる(図7-45)

▼病態

機能性腫瘍と非機能性腫瘍

 神経内分泌腫瘍はホルモンを産生して臨床症状を呈する機能性神経内分泌腫瘍とホルモンを産生しない非機能性神経内分泌腫瘍に分けられ,診断と治療で異なる対応が必要である.

 インスリノーマは,低血糖を主訴に受診することが多く,若年発症では多発性内分泌腫瘍症Ⅰ型(multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)合併が多い.大部分(85%程度)が良性と考えられているが,切除後,時間が経って多発肝転移でみつかる場合もあり,術後の長期経過観察が重要である.これ以外の神経内分泌腫瘍は悪性腫瘍として扱う.

 ガストリノーマは膵内分泌腫瘍や十二指腸の腫瘍として発生し,難治性や多発性,再発を繰り返す消化性潰瘍(十二指腸,空腸),消化管出血,消化管穿孔などがみられ,胃切

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