▼病態
DBAは,乳児期に発症する赤血球造血のみが障害される先天性の赤芽球癆である.これまで発見されたDBAの遺伝子変異は,GATA1以外はすべてリボソーム蛋白(RP)遺伝子のヘテロ変異あるいは片アレル欠失であった.RPS19遺伝子変異は約25%のDBA患者に認められるが,その後,RPS17,RPL5,RPL11,RPL35Aなどの10以上のRP遺伝子に変異が発見された.リボソームの機能障害の結果,p53の活性化が起こることがDBAの中心的な病因と考えられている(図8-12図).また,リボソーム蛋白の欠乏は,翻訳開始能の低下を引き起こす.特にGATA1転写因子の翻訳低下が貧血を起こす重要な役割を果たしていると考えられている.
▼疫学
ほとんどは,常染色体優性遺伝の形式をとる.発症頻度は,出生人口100万人あたり約5~7人と推定されている.
▼診断
表8-9図に診断基準を示す.すべての基準を満たさない場合でも,遺伝子変異や家族歴がある症例では,散発例や非典型例を疑う.
末梢血液標本で大球性正色素性貧血を示し,網赤血球は減少ないしは消失する.白血球数および血小板数は正常である.骨髄は正形成であるが,赤血球系細胞のみが著減する.バイオマーカーとして,赤血球アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)活性が上昇と赤血球還元型グルタチオン(GSH)の増加が知られている.
鑑別診断として乳児一過性赤芽球減少症(transient erythroblastopenia of childhood:TEC)が最も重要である.
▼治療
➊副腎皮質ステロイド薬
約80%の症例で反応が認められる.約20%の症例はステロイドから離脱可能となる.
➋輸血
ステロイド抵抗性である場合には,輸血が必要となる.長期間の輸血は,鉄過剰によるヘモジデローシスをきたし,鉄沈着による肝障害,糖尿
関連リンク
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