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治療

【2】プロテインC欠乏症,プロテインS欠乏症
protein C deficiency,protein S deficiency
大森 司
(自治医科大学教授・病態生化学)

疾患を疑うポイント

●家族歴,若年,非典型部位,再発性の血栓症に遭遇したら本症を疑う.

学びのポイント

●PC,PSはビタミンK依存性の抗凝固因子であり,その欠乏が血栓症リスクとなる.

●常染色体顕性(優性)遺伝形式で,ホモ接合体は重篤な新生児電撃性紫斑病を引き起こす.

●ワルファリン投与で広範な皮膚壊死をきたすことがある.

●日本人の先天性血栓性素因としてはPS分子異常症が最も多い.

●PSは妊娠,経口避妊薬の内服で低下する.

▼定義

 プロテインC(protein C:PC)欠乏症,プロテインS(protein S:PS)欠乏症は,それぞれの抗凝固因子の遺伝子異常による常染色体顕性遺伝の血栓性素因である.ホモ接合体は新生児電撃性紫斑病を引き起こす.

▼病態

 PC,PSは両者ともに主に肝臓でつくられるビタミンK依存性の蛋白質で,凝固カスケードの制御機構として機能する.PSは約半分が補体C4b結合蛋白質に結合し,残りの遊離PSが機能的な蛋白質である.凝固カスケードの進行により生じたトロンビンが血管内皮上のトロンボモジュリンに結合する.この結合により,トロンビンの作用が中和されるだけでなく,PCが活性化する.活性化プロテインC(activated protein C:APC)はPSを補酵素として,活性化した血液凝固第Ⅴ因子(FⅤa)第Ⅷ因子(FⅧa)を不活性化する(図8-45).凝固反応の進行を車に例えると,PC,PSはスピードが出た際(トロンビン産生)のエンジンブレーキのように働く.よって,これらの因子の低下は血栓症のリスクとなる.

 PC欠乏症,PS欠乏症は先天性の疾患である.常染色体に存在し,一般的に血栓リスクとなるのはヘテロ接合体である.ホモ接合体,または複合ヘテロ接合体の場合,新生児期に電撃性紫斑病とよばれる重度の全身血栓症をきたす.PC,PSの半減期は,ほかのビタミンK依存性の凝固

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