診療支援
治療

【10】慢性リンパ性白血病
chronic lymphocytic leukemia(CLL)
鈴宮 淳司
(島根大学医学部附属病院・先端がん治療センター/腫瘍・血液内科教授)

疾患を疑うポイント

●成熟小型リンパ球が増えている.

●脾腫,リンパ節腫脹がある患者.

▼定義

 CD5とCD23の共発現がみられる小型成熟B細胞リンパ球腫瘍であり,末梢血中に単クローン性Bリンパ球の増加(≧5,000/μL)がみられる.単クローナル性Bリンパ球が5,000/μL未満の場合,症状や臓器腫脹がなければ,単クローン性Bリンパ球増加症(monoclonal B cell lymphocytosis:MBL),症状や臓器腫脹があればCLLと診断される.白血化を示さずリンパ節腫脹などリンパ腫としての性質をもつ場合は,小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma:SLL)と診断する.多くは進行が緩徐(インドレント,indolent)であるが,一部に進行が速いリンパ腫に形質転換することがありRichter(リヒター)症候群とよばれ,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が大部分を占める.

▼病態

 病初期は無症状で,80%の患者が早期で診断される.進行すると易疲労感,発熱,体重減少,盗汗などの消耗性症状と,貧血による症状,好中球減少などに伴う易感染性,血小板減少による出血症状,無痛性リンパ節腫脹,脾腫,肝腫がみられる.また自己免疫性溶血性貧血や血小板減少症が合併することがある.

 造血幹細胞から分化したB細胞が,B細胞受容体(B cell receptor:BCR)を介する抗原刺激を受け,異常なB細胞クローンが出現し,そのクローン細胞に付加的な遺伝子異常が加わり,生存や増殖に有利な能力を獲得したクローンが選択され,MBLの時期を経て,CLLになるという多段階進展モデルが提唱されている.次世代シークエンサーを用いた研究により,1)DNA損傷と細胞周期のコントロール(ATMTP53),2)Notchシグナル経路(NOTCH1FBXW7),3)炎症性経路(MYD88

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