疾患を疑うポイント
●60歳代に発症のピークがあり,動静脈血栓症の既往がある患者が多い.顔面は紅潮し,高血圧,頭痛,めまいなど血流障害の症状を呈する.半数が検診などで偶然に発見される.
学びのポイント
●病因はJAK2遺伝子変異によるサイトカインシグナルの亢進.
●予後は比較的良好であり,治療の目標は血栓症リスクの低減.
▼定義
造血幹細胞レベルで生じた異常により血球産生が亢進する腫瘍性疾患である.慢性骨髄性白血病,本態性血小板血症,原発性骨髄線維症とともに骨髄増殖性腫瘍に分類される.白血球や血小板も増加するが,特に赤血球増加が顕著で,チロシンキナーゼJAK2の遺伝子変異がほぼ全例に認められる.
▼病態
JAK2はエリスロポエチン(erythropoietin:EPO),トロンボポエチン,顆粒球コロニー刺激因子といった造血サイトカインのシグナル伝達を担うチロシンキナーゼである.変異は617番目のアミノ酸バリン(V)がフェニルアラニン(F)へ置換されるためV617F変異とよばれ,95%以上に認められる.残り約3%の症例では,JAK2の別の部位に変異がみられる(JAK2 exon12変異).変異によるJAK2の恒常的活性化により,造血シグナルが亢進する.
赤血球量の増加による血液粘稠度上昇により高血圧のほか,頭痛,めまい,視力障害など血流障害の症状を呈する.約20%の症例で脳梗塞や深部静脈血栓症などの動静脈血栓症の病歴がある.皮膚瘙痒症や肢端紅痛症,痛風もよくみられる症状である.理学所見では,顔面の紅潮,眼結膜や口腔粘膜の充血が顕著で,しばしば脾腫を認める.
検査所見では血算で赤血球が増加している.好中球増加が2/3の症例に,血小板増加が約半数の症例でみられる.生化学検査では,血球の産生と破壊の亢進を反映して尿酸やLDHが上昇している.骨髄は,赤芽球,顆粒球,巨核球の3系統がいずれも増加し
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