診療支援
治療

【18】成人T細胞白血病・リンパ腫
adult T-cell leukemia-lymphoma(ATL)
塚崎 邦弘
(埼玉医科大学国際医療センター・造血器腫瘍科教授)

疾患を疑うポイント

●高齢者に好発する,末梢血,皮膚病変を呈することが多い,花弁様核を有する成熟T細胞の白血病またはリンパ腫(図8-72,73)

●患者,患者の母親の出身地は,HTLV-1多発地域であることが多く,ATLの家族歴は少なくない.

学びのポイント

●予後,治療法ともに異なるので,まずほかの悪性リンパ腫と鑑別することが重要.

●特徴的な花弁様の核をもった細胞の形態とT細胞形質の同定と,抗体測定によるHTLV-1感染の同定で診断する.

●HTLV-1の母乳感染でHTLV-1ウイルス感染者(HTLV-1キャリアという)となった後,数十年の潜伏期を経て数%のキャリアが多段階発癌によってATLを発症する(図8-74)

●臨床病型を分類してからその悪性度と患者の年齢・合併症などによって治療法を決定する(表8-58)

▼定義

 ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(human T-cell leukemia virus type Ⅰ:HTLV-1)が病因である成熟CD4陽性T細胞の腫瘍であり,白血病・リンパ腫の病態をとる.

▼病因

感染細胞の腫瘍化

 後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)患者におけるHIVの増殖と異なり,HTLV-1キャリアとATL患者ではHTLV-1に対する抗体,細胞傷害性T細胞の機能があり,HTLV-1抗原はほとんど発現していない.代わりにHTLV-1は感染したCD4陽性T細胞をクローナルに分裂増殖させて自身を宿主と共存させている.

 すべてのHTLV-1キャリアではHTLV-1感染細胞のオリゴクローナルな増殖がPCR法などの鋭敏な測定法で血液中に検出されるが,そのプロウイルス量は全白血球の数%のみである.一方典型的なATL患者では白血球数は10万/μL前後まで増加し,モノクローナルに増殖するプロウイルス量は

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