▼定義
一般に1日の尿量が3L以上を多尿という〔第1章の→も参照〕.
▼分類
多尿は水利尿と溶質利尿とに分類され,その鑑別には尿浸透圧が有用である.尿比重は簡単に測定できるので尿浸透圧の予測に有用である.おおよその目安として尿比重の下2桁を30倍すると尿浸透圧となる(1.010なら300mOsm/L,1.020なら600mOsm/L).しかし,ブドウ糖や造影剤のように大きな分子量をもった溶質が存在する場合は尿比重から尿浸透圧を予測することはできない.
水利尿による多尿では尿浸透圧が300mOsm/L未満となる.水利尿は心因性多飲や尿崩症が原因となる.尿崩症では抗利尿ホルモンであるバソプレシンの合成・分泌障害(中枢性尿崩症)や反応性の低下(腎性尿崩症)により多尿となっている.
溶質利尿による多尿では尿浸透圧が300mOsm/L以上となる.溶質利尿はさらに浸透圧利尿とナトリウム利尿に分類される.浸透圧利尿は糖尿病,造影剤,マンニトール投与,高カロリー輸液などが原因となり,ナトリウム利尿は利尿薬投与,生理食塩液薬投与,腎不全などが原因となる.
▼診断(図9-4図)
心因性多飲では水制限試験により尿量が減少し,尿浸透圧の上昇を認める.その一方で,尿崩症では中枢性尿崩症および腎性尿崩症にかかわらず,水制限試験により尿量は減少せず,尿浸透圧は上昇しない.中枢性尿崩症と腎性尿崩症の鑑別にはバソプレシン負荷試験を行う.腎性尿崩症ではバソプレシン負荷試験で尿量の減少と尿浸透圧の上昇を認めない.
溶質利尿の鑑別には尿張度と尿浸透圧の比較が有用である.通常,尿浸透圧は尿張度〔尿中のNaとKの和(単位:mOsm/L)を2倍した値〕に近い.この場合はナトリウム利尿が多尿の原因と考える.その一方で,尿張度に比べて尿浸透圧が大幅に高いときには糖,造影剤,マンニトールなどの浸透圧物質による浸透圧利尿が多尿の原
関連リンク
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- 臨床検査データブック 2023-2024/尿比重 [保] 26点
- 臨床検査データブック 2023-2024/尿量
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- 新臨床内科学 第10版/8 中枢性尿崩症
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