学びのポイント
●尿沈渣は正常でもみられるものとみられないもの(病的なもの)とがある.少数の赤血球や白血球は正常でもみられる.その一方でほとんどの円柱は病的であり,またシスチン結晶やコレステロール結晶などの結晶も病的である.
▼定義
尿沈渣は尿10mLを遠心分離することにより得られる沈殿成分のことであり,細胞,円柱,結晶などが含まれる.
▼分類
➊細胞
1)赤血球
赤血球はその大きさが6~8μmの淡黄色で中央が窪んだ円盤状の細胞である.400倍視野で赤血球を5個以上認める場合,病的とされ血尿という.
2)白血球
白血球はその大きさが10~15μmで赤血球よりも一回り大きく,球形の内部が顆粒状の細胞である.多くの場合,白血球は好中球であるが,病態により好酸球,リンパ球,単球などが増加する.400倍視野で白血球を5個以上認める場合,病的とされ膿尿という.
膿尿は尿路の炎症を示唆する所見であり,尿路感染症,尿路腫瘍,尿細管間質性腎炎などその原因は多岐にわたるが,最も多いのは尿路感染症である.尿培養で細菌を認めない膿尿を無菌性膿尿とよぶ.その原因となる尿路感染症としては,特にクラミジアや腎結核が重要である.
3)尿細管上皮細胞
尿細管上皮細胞は大きさが10~35μmと白血球よりもさらに大きく,多彩な形態を呈する.尿細管上皮細胞が壊死すると剝離,脱落して尿中に混入する.健常者においても少数はみられる.急性腎障害において尿細管上皮細胞を認める場合は急性尿細管壊死を疑う.
4)卵円形脂肪体
卵円形脂肪体は,大きさが10~40μmと尿細管上皮細胞よりも大型で内部に脂肪顆粒を多数含む.卵円形脂肪体は蛋白を大量に細胞内に取り込み変性・脱落した尿細管上皮細胞やマクロファージである.ネフローゼ症候群などの高度の蛋白尿においてみられる.
➋円柱
円柱は尿細管から分泌されるTamm-Horsfall(タム-ホースフォー