1　腎機能の評価法 | 医学書院

　腎機能の評価は，血清クレアチニン(creatinine：Cr)値を基にした推算糸球体ろ過値(estimated glomerular filtration rate：eGFR)を用いる．しかし，GFR推算式はあくまで簡易法であるため，より正確にはイヌリンクリアランス(inulin clearance：C_in)やクレアチニンクリアランス(creatinine clearance：C_cr)で評価することが望ましい．特にイヌリン薬は糸球体のみでろ過され，尿細管で分泌も再吸収もされない物質であり，正確な糸球体ろ過値を測定できる．

　日本人のeGFR推算式は以下の通りである．

●eGFR(mL/分/1.73m²)＝

　194×Cr^-1.094×年齢(歳)^-0.287(女性は×0.739)

　Cr：血清Cr値(mg/dL)

　注①：酵素法で測定されたCr値(小数点以下2桁表記)を用いる．

　注②：18歳以上に適用し，小児の腎機能評価には小児の評価法を用いる．

　GFR推算式では，四肢欠損，筋肉疾患，長期臥床などにより筋肉量の減少している症例で高く推算される可能性があり，そのような症例に腎排泄性の抗がん剤・抗菌薬を投与する場合には，過量投与とならないように注意が必要である．必要に応じて，後述のeGFRcys，C_cr，C_inの実測を行う．血清Cr値は肉類の摂取後や尿細管分泌を抑制する薬剤(シメチジン薬など)の使用時は高くなるので，eGFRは低く推算される可能性があり，注意が必要である．

‍　血清シスタチンC(cystatin C：Cys-C)値を基にした推算糸球体ろ過値(eGFRcys)も利用できる．シスタチンCは分子量13.36kDの一本鎖のポリペプチドで，これは全身の有核細胞で産生され，年齢，性別，筋肉量，運動などの細胞内外の環境に影響されることなく一定の速度で分泌される．糸球体で自由にろ過，近位尿