診療支援
治療

2 高カリウム血症
hyperkalemia
門川 俊明
(慶應義塾大学・医学教育統轄センター教授)

▼定義

 血清K 5.5mEq/L以上を高K血症という.

▼病態

 Kは細胞膜の静止膜電位を決定する最重要因子である.したがって,K濃度の異常は細胞の興奮しやすさ,しにくさに影響する.最も影響を受けるのは,筋肉と心臓である.軽度の高K血症では無症状であることが多い.高度の高K血症(血清K 7mEq/L以上)では,筋力低下,麻痺,徐脈や不整脈が出現する.

▼診断

 偽性高K血症としては,採血時の溶血が頻度が多い.また,血小板や白血球の著増によって,採血した血液の凝固の過程でKが放出されて見かけ上の高K血症をきたすことがある.偽性高K血症を防ぐためにはヘパリン採血を行って,血漿K値を測定する.

 偽性高K血症が除外できれば,①K負荷,②細胞内から外へのシフト,③腎からのK排泄障害のいずれによって,高K血症が起こっているか判断する.

K負荷

 K摂取の過多が単独で高K血症になることはまれで,同時に,細胞内から外へのシフトや,腎からのK排泄障害を伴っていることがほとんどである.Kは細胞内の主要陽イオンなので,生野菜,果物,生の肉などにKが多く含まれている.また,細胞崩壊(横紋筋融解)でも,細胞内のKが血液中に放出される.

細胞内から外へのKシフト

 高血糖などの高浸透圧血症(細胞内の水とともにKが細胞外に移動することによる),無機酸による代謝性アシドーシス,相対的インスリン欠乏などが挙げられる.糖尿病性ケトアシドーシスのときは,高血糖による高浸透圧血症とインスリン不足により,高K血症となるが,あくまでも,細胞内から細胞外へのシフトが起こっているだけで,体内のK量はむしろ減少していることが多いので,治療の過程で,低K血症をきたす可能性が高い.

腎からのK排泄障害

 最も多い高K血症の原因である.ただし,腎機能低下症例でも,アルドステロン分泌と遠位尿細管での流量の保持によって,K排泄は維持されているので

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